サマリー
◆2024年7月19日、13年間にわたりベトナム共産党の書記長を務めたチョン前書記長が逝去した。これに伴い、同年8月3日、ラム国家主席が書記長を継いだ。海外からは、新しい書記長の就任が政治的および経済的な不安を引き起こす可能性があるとの見方もある。しかし、過度に不安を抱く必要はない。むしろ、ラム書記長による積極的な経済改革の下、ベトナムは、日本企業が進出する上でより好ましい環境になると見込まれる。タイやマレーシア、ミャンマーのように、政治不安が外資の流入を阻害するシナリオが発生する可能性は非常に低いだろう。
◆チョン政権下のベトナムでは、海外からの直接投資が継続的に増加し続けていただけでなく、輸出がGDPに占める割合も上昇していた。ベトナムが内需と外需の両輪で成長を遂げる国になったことは、チョン前書記長の功績といえるだろう。一方で、チョン前書記長が成し遂げることができなかった課題も残る。国営企業の非効率経営、ベトナム軍によるビジネス経営、イノベーション欠如、電力不足といった諸課題に対する継続的な改革が望まれている。
◆ラム政権下のベトナムでは、経済改革の進展に加え、安定した国内政治環境と「竹外交」(竹のように柔軟かつ堅強な外交)がもたらす良好な国際関係を維持すると考えられる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
尹大統領の罷免決定、不動産問題が選挙のカギに
賃借人保護の不動産政策を支持する「共に民主党」の李在明氏が、大統領選挙で一歩リードか
2025年04月24日
-
トランプ関税のアジア新興国への影響と耐性は?
製品によって異なる影響。対外的な耐性は十分もインドネシアに注意
2025年04月16日
-
トランプ2.0、資源面でアジアに恩恵も
米国産LNGがエネルギー移行を促進・重要鉱物の代替供給地になるか
2025年03月26日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日