サマリー
◆IMFは、ロシアの経済成長率が2023・24年にプラス成長となると予測した。前年の反動に加え、政府の拡張的財政政策が景気を浮揚したことが背景にある。「プラス成長=力強いロシア経済」というわけではない。
◆戦争状態がもたらした経済のゆがみも、インフレという形で鮮明となっている。インフレの背景には、①拡張的財政政策で押し上げられた需要に見合うほどの供給が確保できないこと、②制裁の影響によるルーブル安で、輸入品の価格が上昇していることが挙げられる。インフレ圧力が続く限り、ルーブルには下落圧力がかかる。さらに財政赤字の拡大も、ルーブル安に拍車をかけるだろう。そうなれば、輸入物価の上昇を通じて、国内のインフレ圧力が一段と高まる。ロシア経済は、そのような負の循環に陥りつつある。
◆ロシア国内では外貨が不足しており、国民の外貨へのアクセスは限られている。国民は、高インフレ下で自身の資産価値の目減りに直面している。民心の離反につながりかねない。2024年3月に大統領選挙を控える中、政策運営はますます困難を極めると考えられる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
尹大統領の罷免決定、不動産問題が選挙のカギに
賃借人保護の不動産政策を支持する「共に民主党」の李在明氏が、大統領選挙で一歩リードか
2025年04月24日
-
トランプ関税のアジア新興国への影響と耐性は?
製品によって異なる影響。対外的な耐性は十分もインドネシアに注意
2025年04月16日
-
トランプ2.0、資源面でアジアに恩恵も
米国産LNGがエネルギー移行を促進・重要鉱物の代替供給地になるか
2025年03月26日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日