サマリー
◆コロナ禍からの景気回復スピードに、先進国と新興国で差が生じている。IMFは2021年の先進国・地域の成長率を上方修正、新興国・途上国を下方修正した。そのような中、米国では量的緩和縮小のタイミングが議論されており、新興国はその動向を注視しているが、これをきっかけに新興国から一様に資本が流出し、それが長期化するとは考えにくい。なぜなら、米国の金融政策の変更は、同国の景気回復・拡大に裏付けられたものだからである。新興国がその波及効果を享受できるという期待が膨らめば、市場でのリスク許容度が高まり、新興国の為替レートへの下落圧力も低下すると考えられる。
◆ただし、米国の金融政策の変更が、一時的に新興国からの資本流出を引き起こすきっかけとなる可能性は否定できない。今後は、米国の景気回復によって享受できる恩恵と、資本流出や為替レート下落といったリスクのバランスで、新興国の中でも景気回復のペースにばらつきが生じる可能性がある。本稿では、各国の対米輸出依存度や、経常赤字のファイナンス方法、さらに対外的な環境の変化に対する耐性を見ることで、米国の景気回復と金融政策の変更が、新興国に意味するところを明らかにしたい。
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