サマリー
◆コロナ禍における世界貿易は、「コロナ特需」の発現や米国・中国の繰越需要の顕在化、アジア地域のサプライチェーンの回復によって、想定を上回るペースで回復した。米国やアジア向け輸出の割合が高いASEAN諸国にとってこれは朗報であったが、どの程度その恩恵を享受できたかは、それぞれの輸出構造・競争力によって国ごとに差がある。本稿では、ASEAN5(インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム)各国が、コロナ禍で特に需要の高まった「電子・電気機器」産業のどの分野に競争力を持つのかを見ていくことで、今後の輸出動向を見通した。
◆コロナ禍に力強い回復力を見せたのは、半導体の一連の製造工程基盤を国内に持ち、近年では米中貿易摩擦を背景に輸出競争力を高めていたマレーシア、そして幅広い「電子・電気機器」品目の産業集積が進んだベトナムであった。他方で、「電子・電気機器」産業の規模と競争力が見劣りするフィリピンや、輸出の大半を資源に依存するインドネシアは、コロナ禍で高まった世界需要の取り込みが限定的なものにとどまった。
◆今後は、コロナ禍がきっかけとなって加速したオンライン化・デジタル化という流れで、半導体や、HDD(ハードディスクドライブ)等の記憶装置の需要が増加する見込みである。その場合、マレーシアやベトナムの半導体産業、タイのHDD産業にとっては追い風となるだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
なぜベトナムは「不平等協定」を結ぶのか
米国・ベトナムの「ディール」を解明する
2025年08月14日
-
米国抜きの連携拡大~CPTPPのEU拡大が意味すること
「反米色」を排除しながら自由貿易の枠組みを強化、アジアに恩恵も
2025年07月23日
-
インド経済は堅調か?2025年度Q2以降の見通し
個人消費とインフラ投資がけん引役。利下げが都市部の消費を刺激へ
2025年07月07日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日