サマリー
◆コロナ禍による、2020年春に生じた新興国からの資本流出は、4月になると落ち着きを取り戻した。他方で、各国で発表される統計を見ると、実体経済の悪化は明らかである。金融市場と実体経済に乖離が生じている中、再びリスク・オフの動きが強まった場合、どのような国が最も影響を受けるのだろうか。
◆かつて「フラジャイル5」と呼ばれた国々は、各国とも対外不均衡を抱えたまま、コロナ危機に突入した。しかし、その「深刻度」は、どのように経常収支赤字をファイナンスしているのか、どの程度セーフティーネットを構築しているのか、成熟した国内金融市場の有無、中銀の独立性、財政政策の余地、といった点で異なる。
◆総合的に評価すると、リスク・オフの動きが強まることで、資本流出・為替変動の影響を最も大きく受けやすいのは、トルコである。国内与信拡大の原資として海外からのファイナンスが用いられているため、資本の流出が生じると、銀行や企業のバランスシートへの影響が大きい。さらに為替レートの減価に対する耐性も低い。
◆コロナ対策としての財政能力が最も低いのは、南アフリカ(以下、南ア)である。南アのように、格付機関から投資不適格とされ、中所得国でもコロナ対策のための十分な資金調達能力を持たない国への支援策として、IMFの緊急融資制度は有効であると評価できる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
インド:所得減税・GST改正の効果は?
GST税率引き下げは耐久財消費を喚起。企業投資につながるか注視
2025年11月14日
-
インドネシア:弱含む内需への対応策は?
雇用問題が消費者心理に影響。ヒト・モノへの投資バランス調整を
2025年11月13日
-
なぜベトナムは「不平等協定」を結ぶのか
米国・ベトナムの「ディール」を解明する
2025年08月14日
最新のレポート・コラム
-
消費データブック(2025/12/2号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2025年12月02日
-
「年収の壁」とされる課税最低限の引上げはどのように行うべきか
基礎控除の引上げよりも、給付付き税額控除が適切な方法
2025年12月02日
-
2025年7-9月期法人企業統計と2次QE予測
AI関連需要の高まりで大幅増益/2次QEでGDPは小幅の下方修正へ
2025年12月01日
-
「2030年に女性役員比率30%」に向けた課題
TOPIX500採用銘柄における現状、変化、業種別の傾向等の分析
2025年12月01日
-
なぜ今、ベトナム市場なのか:外国人投資家が注目する理由
2025年12月01日

