サマリー
◆ベトナム経済は近年高成長を実現してきた。高成長を牽引した主体の一つは、製造業を中心とした外資系企業である。実際、工業生産高を見ると、外資系企業の伸び率(前年比)は2011年以降、ベトナム国内企業のそれを上回っており、輸出金額も2010年以降は工業生産高と同様の状況である。
◆外資系企業がベトナムでビジネスを展開する主な理由として、①低賃金ながらも基礎教育をしっかり受けた質の高い働き手が多いこと、②労働者の多くがベトナム人で構成されていること、③インフラ整備が着実に進展したこと、などが指摘できる。
◆ただし、今後交通インフラの不足が経済・社会問題化するリスクには注意が必要であろう。まず、政府債務が上限近くに到達したことを背景にインフラ開発のペースが鈍化する可能性がある。さらに、現地ヒアリングでは、政府の実行力不足が都市部におけるインフラ整備の遅れに繋がるという指摘もあった。ベトナムより経済発展が進んでいるフィリピンやタイでは経済成長に伴い、道路・空港・港湾などの交通インフラの不足が経済および社会的問題としてクローズアップされる場面が増加した。こうした問題がベトナム国内で発生する可能性を少しでも減らすべく、同国政府がインフラ整備に強い実行力を以て取り組めるかが注目される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
なぜベトナムは「不平等協定」を結ぶのか
米国・ベトナムの「ディール」を解明する
2025年08月14日
-
米国抜きの連携拡大~CPTPPのEU拡大が意味すること
「反米色」を排除しながら自由貿易の枠組みを強化、アジアに恩恵も
2025年07月23日
-
インド経済は堅調か?2025年度Q2以降の見通し
個人消費とインフラ投資がけん引役。利下げが都市部の消費を刺激へ
2025年07月07日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日