サマリー
◆2016年のASEAN5ヵ国(インドネシア、タイ、マレーシア、フィリピン、ベトナム)の経済は低いインフレ率や各国中銀が近年取っていた緩和的な金融政策等を背景に、米国大統領選まで底堅く推移していた。米国大統領選直後はにわかに資金流出圧力が高まり、一部の国では自国通貨買い介入や資本規制が実施されたものの、12月以降はこうした類の動きは殆ど沈静化した。
◆2017年末にかけてもASEAN5ヵ国の経済は底堅く推移する見通しである。2016年前半にタイやベトナムなどを苦しめた天候問題は発生しないという前提条件に立てば、昨年の反動でタイやベトナム等では農業の成長率が回復するほか、インフレ率に若干下落圧力がかかると見込まれる。コモディティ価格の上昇もマレーシア・インドネシアといった資源国にとって追い風となろう。コモディティ価格の回復・米国経済の緩やかな拡大・中国経済の底堅さ、などを背景に輸出は加速すると見込まれる。こうした状況下、設備投資や個人消費も堅調に推移する見込みである。また、各国中銀が金融政策を現状のやや緩和的なスタンスで据え置く、もしくは微調整のレベルにとどめる可能性が高い点も設備投資・個人消費の双方を下支えすると期待できる。
◆ただし、米国のトランプ政権の政策から生じる数々のダウンサイドリスクが存在する点には細心の注意を払うべきであろう。具体的には、①保護主義的な経済政策の巻き添えとなるリスク、②TPPの頓挫を背景とした外資系企業の投資マインドが悪化するリスク、③米国の金利が急上昇し、新興国から資金流出圧力が強まるリスク、が指摘できる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
尹大統領の罷免決定、不動産問題が選挙のカギに
賃借人保護の不動産政策を支持する「共に民主党」の李在明氏が、大統領選挙で一歩リードか
2025年04月24日
-
トランプ関税のアジア新興国への影響と耐性は?
製品によって異なる影響。対外的な耐性は十分もインドネシアに注意
2025年04月16日
-
トランプ2.0、資源面でアジアに恩恵も
米国産LNGがエネルギー移行を促進・重要鉱物の代替供給地になるか
2025年03月26日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日