サマリー
◆2015年10月、TPP交渉は大筋合意に至った。これを受け、大和総研ではTPPがアジアにもたらす影響について2回に分けてレポートにまとめる。本稿は第1回(概要編)で、アジアにおけるTPPの位置づけに焦点を当てる。第2回は各国編で、TPPがマレーシア、ベトナム、タイに及ぼす影響を紹介する。
◆TPPはその基盤をAPECとしているが、APECのように緩い枠組みではなく、各国に国際的な約束を求める厳格な協定である。交渉は、従来からAPECのFTA化を望んでいる米国を中心に進んでおり、中国不在の中でいかにアジア太平洋の新たなルールを形成できるか、という点に焦点が当てられている。米国においては、TPPを基盤としてアジア太平洋自由貿易圏を創設する方針であるが、アジアの現状を見ると、TPPと並行して交渉が進んでいるRCEPの重要性も否定できない。
◆東アジア地域では、多くの2国間FTAが張り巡らされる中、その使い勝手の悪さから、より包括的な経済連携協定の成立が急がれている。RCEPとTPPでは、その目的、貿易構造において違いがある。また、Petri教授らの試算では、両者がアジアに与える影響も異なる。
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