2016年02月15日
◆2015年10月、TPP交渉は大筋合意に至った。これを受け、大和総研ではTPPがアジアにもたらす影響について2回に分けてレポートにまとめた。第1回(概要編)では、アジアにおけるTPPの位置づけに焦点を当てた。本稿は第2回(各国編)で、TPPがマレーシア、ベトナム、タイに及ぼす影響を紹介する。
◆マレーシアは、難航する米国とのFTA交渉と2020年までの先進国という目標を背景に、TPP交渉に参加している。繊維製品などの素材と機械類といった競争力のある品目で米国市場を開拓したい。マレー系を優遇するブミプトラ政策から、国有企業や政府調達の分野の開放には消極的だったが、TPP交渉に臨むことでこれらの分野に切込みを入れる意欲を見せた。
◆ベトナムもマレーシアと同様に米国市場の取り込みを大きな目的としている。米国への繊維製品輸出により、非参加国である中国の米国向け輸出シェアを奪いたい考え。一方で、域内調達を基本とする繊維製品の原糸原則は課題である。また、サービス分野の外資規制緩和や国有企業への優遇廃止など、国内改革のために大きく舵を切った分野もある。
◆タイは大筋合意以降、TPP参加への関心を示し始めたが、これまでの動きは政府内に研究会を組成するに留まり、未だ態度は明確ではない。タイのTPP参加は、個別に締結してきた二国間FTAを束ねる共通の通商ルールが利用可能となる点、対米輸出を伸ばす機会となり得るといった点で、タイに進出する日系企業にもメリットがあろう。一方、参加に向けた大きな課題は、農畜産業や医薬品産業を中心とした強力な反対勢力を説得できるかどうか。政治手腕が問われるが、決断までに残された時間はそう多くはない。
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