サマリー
◆10月1日、マレーシアの「国内取引・協同組合・消費者省」は、補助金付きのレギュラーガソリンと軽油の価格を1リットル当たり0.2リンギ(約7.0円)ずつ引き上げると発表した。一方で、インドネシアのジョコ・ウィドド大統領も11月17日、補助金付きレギュラーガソリンと軽油の価格を1リットル当たり2,000ルピア(約19.4円)引き上げると発表した。
◆両国の政府が燃料補助金を削減した理由は財政負担を軽減するためであるが、その背景は異なる。マレーシアは法定上限近くまで達した政府債務を縮小させるため、インドネシアはインフラ不足を解消するためである。
◆燃料補助金の削減は①物価上昇を通じた消費・投資マインドの悪化、②物価抑制を目的とした利上げによる資金調達コスト増、などを通じ経済を減速させるが、今回のマレーシアとインドネシアのケースは経済を大きく悪化させる可能性は高くはないであろう。まず、マレーシアに関してはインフレ率の上昇幅は比較的小さな範囲に収まると見込まれている。さらにインドネシアのインフレ率の上昇幅はマレーシア以上となる見込みであり、中銀は11月18日に緊急の金融政策決定会合を開催し、政策金利であるBIレートを7.5%から7.75%へ引き上げたが、これ以上何度も追加で金融引き締めが実施される公算は大きくはないと思われる。
◆マレーシアとインドネシアで実施された燃料補助金削減は経済のファンダメンタルズを改善させ、それが中長期的な成長に寄与すると期待される。さらに、国際原油価格の下落が続いていたという好条件を差し引いたとしても、国民から大きな反発を受けることも少なくない燃料補助金の削減・廃止を大きな混乱なく実施できた点は、両国の政治の実行力の高さを示すものであり、評価されるべきであろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
-
中国経済:2023年の回顧と2024年の見通し
24年の成長率目標は5%か?達成の鍵は民営企業へのサポート強化
2023年12月21日
-
2024年の米国経済見通し
①個人消費の腰折れ、②インフレ率の高止まり、③政治の停滞がリスク
2023年12月21日
-
2024年度税制改正大綱解説
定額減税は経済対策としては疑問だが、インフレ調整策としては有効
2023年12月25日
-
四半期報告書の廃止に関する改正法の成立
四半期報告書が廃止された後の四半期決算短信の内容は?
2023年12月04日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
中国経済:2023年の回顧と2024年の見通し
24年の成長率目標は5%か?達成の鍵は民営企業へのサポート強化
2023年12月21日
2024年の米国経済見通し
①個人消費の腰折れ、②インフレ率の高止まり、③政治の停滞がリスク
2023年12月21日
2024年度税制改正大綱解説
定額減税は経済対策としては疑問だが、インフレ調整策としては有効
2023年12月25日
四半期報告書の廃止に関する改正法の成立
四半期報告書が廃止された後の四半期決算短信の内容は?
2023年12月04日