サマリー
◆アジア新興国は5月後半以降の自国通貨安に対してドル売り介入を行ったとみられ、外貨準備が減少している。また、リーマン・ショック以降、経常収支の黒字幅が縮小した結果、アジア新興国の外貨準備は増加しにくい構造になっていると言える。さらには、米国の量的緩和縮小観測などが、再度アジア新興国からの資本流出につながり、外貨準備を減少させる局面が来る可能性もあろう。
◆そこで、注目されるのは、外貨準備の取り崩しや増加ペースの鈍化が、資産構成に与える影響だろう。アジア新興国は主に有価証券かつドル(つまり、米国債中心)で外貨準備を運用している。では、外貨準備の伸びの停滞や減少によって資産構成が変更され、ひいては米国債が売却される可能性はあるのだろうか。
◆過去の経験から見れば、米国債の大々的な売却は考えにくい。なぜなら、アジア新興国は外貨準備を十分に積み上げており、たとえ外貨準備を取り崩すとしても有価証券を売却するまでもなく、現預金を取り崩すだけで事足りるからである。また、通貨構成をみてもドルのプレゼンスはいまだ大きい。各国が保有する米国債についても、継続的に減らしていく動きは一部の経常収支赤字国を除き見受けられない。
◆資産構成内の変化(米国債以外への投資)に関しては、米国債のリターン低下に伴い、資産構成の多様化等を通してリターンを追求する可能性が考えられる。ただし、それは株式等へと保有資産を変えるというよりは、米国債のマチュリティを徐々に長期化するといった緩やかな変化に留まるだろう。つまり、米国債中心の資産構成に今後も大きな変化はないと言える。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
李在明氏の「K-イニシアティブ」を解明する
大統領選で一歩リードしている李在明氏は、韓国経済と日韓関係をどう変えるのか
2025年06月02日
-
カシミール問題を巡る印パの内情と経済への影響
インドは米国の介入を快く思わないが、経済にとっては都合が良い
2025年05月23日
-
尹大統領の罷免決定、不動産問題が選挙のカギに
賃借人保護の不動産政策を支持する「共に民主党」の李在明氏が、大統領選挙で一歩リードか
2025年04月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日