サマリー
◆エジプト情勢が揺れている。エジプト軍のシシ最高司令官は、7月3日夜、テレビ演説で現職のモルシ大統領を解任するとともに、憲法を一時停止するとの声明を発表した。また、憲法裁判所長官のアドリ・マンスール氏を暫定国家元首として指名、モルシ大統領の権限を剥奪した事実上の軍事クーデターとされる。
◆「アラブの春」によるムバラク元大統領退陣を受け、2012年6月、ムスリム同胞団を母体とする自由公正党のモハメド・モルシ党首が自由選挙により、エジプト初の文民、かつイスラム主義者の大統領として就任した。「すべてのエジプト人のための政府」を公約したが、イスラム主義者が政界を支配し、特にムスリム同胞団に権力が集中した。大統領の強権主義的な態度も目立ち、国民の心が急速に離れていったこともクーデターの布石となった。
◆エジプトでは、「アラブの春」以降、経済の立て直しに失敗したとの見方が大きい。6月以降の世界的な金融市場の混乱も重なり、軍事クーデター以前から大きく通貨、株価ともに下落していた。今後、新政権が樹立したとしても、財政問題や失業率等、内政の課題は山積みであり、再度、地政学リスクが高まる可能性は高い。振り出しに戻った「アラブの春」の前途は多難であり、他の近隣諸国へも影響が拡大することが懸念される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
なぜベトナムは「不平等協定」を結ぶのか
米国・ベトナムの「ディール」を解明する
2025年08月14日
-
米国抜きの連携拡大~CPTPPのEU拡大が意味すること
「反米色」を排除しながら自由貿易の枠組みを強化、アジアに恩恵も
2025年07月23日
-
インド経済は堅調か?2025年度Q2以降の見通し
個人消費とインフラ投資がけん引役。利下げが都市部の消費を刺激へ
2025年07月07日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
-
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
-
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
-
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日