サマリー
馬総統は08年の就任以降、成長著しい中国との経済関係の強化を推進した。台湾のハイテク産業は安価な労働力を獲得することで躍進し、中国にも高度な技術を擁する生産拠点が出来た。2011年1月1日には中台の両岸経済協力枠組(ECFA)が発効し、2011年の台湾の対中(香港含む)輸出は、台湾経済部国際貿易局の予測で1,200億米ドル超と過去最高になる見通し。台湾企業による中国人の雇用は、台湾の就業者数に匹敵する約1,000万人、中国在住の台湾人は約120万人といわれ、台湾企業の売上高を見ると、既に中国での売上高が台湾を上回っている企業が少なくない。
同時に、中台関係の深化は、台湾企業にとってプロモーションや投資面などで利便性が高い香港のビジネス拡大にも繋がった。中国との経済貿易緊密化協定(CEPA)を背景に香港には台湾企業約5,000社が拠点を設置し、台湾企業の香港経由での中国との貿易額は右肩上がりである。このように、ビジネス界では、台湾だけでなく、中国、香港からも馬総統の再選を望む声がある。
ただ、馬総統と対抗馬の民主進歩党・蔡主席の支持率は拮抗している。蔡主席は“女性候補”“若返り”を有権者に印象付け、中国との関係見直しを掲げ、疲弊する農業・中小企業など庶民の声を代表する戦略をとっている。2010年11月に行われた5 直轄市長選挙では総得票数が与党・国民党を上回る結果を収めた。
2011年11月には中国への直接投資が欧米からの軟調を受けて、前年同月比▲9.8%となった。この中、中台関係も見直しが進むのか?台湾は2011年9月に日台投資協定を締結しており、台湾を経由した“日本企業による中国投資”という呼び水も持っている。中国としては中台の経済関係が停滞するリスクを避けたいだろう。中国の次期総書記と目される習近平・国家副主席は、中国の中でも台湾と関係が深い福建省での経験が長く、思い入れのある台湾と中国の互恵関係のさらなる飛躍を目指しているといわれる。台湾の有権者がどのような選択をするのかが大いに注目される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
原油高・リスクオフ下での新興国の耐性は
脆弱性が最も懸念されるのは南ア。耐性が高いのはブラジル
2026年04月06日
-
インド2026年度予算案:インフラ投資に軸足を移す
戦略的自律性を意識した攻めの姿勢を評価。債務管理を注視
2026年02月05日
-
2026年のASEAN5経済見通し
外需が原因で前年から減速も、ポリシーミックスが奏功し底堅いか
2026年01月16日
最新のレポート・コラム
-
紛争の激化がサステナブルファイナンスに与える影響
脱炭素への取り組み、防衛産業の取り扱い、人権保護等の観点から
2026年04月13日
-
検討進むガバナンス・コード改訂:2月案と4月案の相違点は
「解釈指針」は原則と一体という記述は削除。現預金への注目を避ける修文。
2026年04月10日
-
企業のAI導入・利用に必要な人権の視点
世界で進展するAI規制の展開と日本の現状を踏まえて
2026年04月10日
-
遺言のデジタル化に向けた検討
「民法(遺言関係)等の改正に関する要綱案」における、遺言の手続きの見直しについて
2026年04月10日
-
AIの評価軸は“賢さ”から“協働”へ
2026年04月13日
よく読まれているリサーチレポート
-
米国:AIブームの裏側で高まる金融リスク
ITセクターの収益懸念が揺らすプライベート・クレジット市場
2026年03月13日
-
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
-
中東情勢緊迫化が日本経済の下振れリスクに
原油価格100ドル/バレルで26年度の実質GDP成長率は▲0.2%pt
2026年03月02日
-
ガバナンス・コード改訂による取締役会等機能強化
取締役事務局の役割を列挙、保有現預金の検証、「コーポレートセクレタリー」への言及など
2026年03月11日
-
「SaaSの死」は何を意味するのか?
AIエージェントが促すSaaS業界の構造変化、経済社会・雇用への波及
2026年03月03日
米国:AIブームの裏側で高まる金融リスク
ITセクターの収益懸念が揺らすプライベート・クレジット市場
2026年03月13日
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
中東情勢緊迫化が日本経済の下振れリスクに
原油価格100ドル/バレルで26年度の実質GDP成長率は▲0.2%pt
2026年03月02日
ガバナンス・コード改訂による取締役会等機能強化
取締役事務局の役割を列挙、保有現預金の検証、「コーポレートセクレタリー」への言及など
2026年03月11日
「SaaSの死」は何を意味するのか?
AIエージェントが促すSaaS業界の構造変化、経済社会・雇用への波及
2026年03月03日

