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中国社会科学院「中国のシャドーバンキングの発展段階、主な特徴、潜在リスク」

2017年09月01日

王喆

張明

劉士達

中国銀行業監督管理委員会(CBRC)は3月末から展開している3種類の裁定取引(監督・空転・関連鞘抜き)「規制アービトラージ(regulatory arbitrage)、空転アービトラージ(idle arbitrage)、関連アービトラージ(related arbitrage)」に対する規制強化において、インターバンク市場で取引される譲渡性預金(筆者注:以下、譲渡性預金)や理財商品(訳者注:日本における投資信託商品に類似)といった、この2年間で急拡大したシャドーバンキングの新たなスタイルを主な規制対象とすることを発表した。実際に2016年下半期以降、商業銀行の資産運用業務や、金融機関の資産管理業務をはじめとするシャドーバンキングの活動に対する、監督・規制が強まると同時に、2017年から実施されたマクロプルーデンス評価体系(MPA)も、譲渡性預金やオフバランスの理財商品、などを監督・規制の対象範囲としたのである。新たに打ち出されたこれらの一連の規制は、シャドーバンキングを対象とした全面的な監督・規制時代の到来を告げており、規制逃れにより信用を拡大させてきた従来の金融機関のビジネスモデルが困難に直面せざるを得ないことを意味している。


中国のシャドーバンキングの発展過程を振り返ってみると、2013年の前後で異なった2つの段階を経て成長して来たことが分かる。しかも、この2つの段階は異なる特徴を見せている。


2008年~2013年は第一段階である。同期間においては、「(銀行が発行する)理財商品—(非銀行金融機関が提供する)融資チャネル業務—非標準化債権資産(訳者注:銀行間市場及び証券取引所市場で取引されていない債権性資産)」が主な業務パターンであった。2008年から商業銀行の資産運用業務はすさまじいスピードで拡大した。理財商品は預金を上回る高リターンを売りに、資金を吸収し、監督・規制を巧みに避けながらオフバランスで信用貸付金業務を担った。非銀行金融機関の「融資チャネル業務」は、資金が流れるためのパイプ役を担っていた。2011年以前は、商業銀行と信託銀行の連携がメインであり、貸付信託といった理財商品が相次いで登場した。2012年の銀行・信託連携に対する監督・規制の厳格化に伴い、商業銀行と証券会社の連携が、商業銀行と信託銀行の連携に代わって爆発的な成長を遂げた。それ以降、商業銀行の連携相手は多様化し、商業銀行とファンドの連携、商業銀行と保険会社の連携などが新たなチャネルとして成長した。非銀行金融機関は、パイプ役としてのみ機能していたため、本来あるべき資産運用機能を発揮しなかったといえる。この時期に、銀行の理財商品の最終的な投資対象は、主に非標準化債権であった。これは金融システムから実体経済に向けて資金が流れる一つのルートであった。2009年以降、「4兆元」の景気対策が巻き起こした投資ブームのなかで、比較的高いリターンと政府の実質的な保証により、銀行の預貸率などへの監督・規制を避けながら、上記の構図を用いて、大量の資金が地方の融資プラットフォーム(訳者注:地方政府がインフラ投資等を行うために設立した資金調達会社)と不動産業に流れ込んだ。他方で、中国銀行業監督管理委員会が2013年に公表した8号文書は、上記構図の下で非標準化債権に資金が流入することを全面的に規制した。結果、規制回避の余地が縮小したことから、これ以降、シャドーバンキングはオンバランスのインターバンク業務などを通じて、監督・規制を回避しながら、投融資を行うようになる。


2013年~2016年は第二段階である。この期間において、インターバンク業務のイノベーションが重要視され、とりわけ2014年以降、シャドーバンキングは、「インターバンク業務—外部委託(非銀行金融機関との協力)—債券などの標準化資産への投資」が主要な形式となった。2013年から2014年にかけては、信託受益権や手形などの買戻し条項付きで売却することを通じて、非標準化債権への投資を一時的にオフバランス化し、規制を逃れる方法が用いられた。2014年に127号文書が打ち出された後、買戻し条項付の売却を活用した非標準化債権への投資は停止された。その後、比較的規制の緩い売掛金に非標準化債券を計上する方法が代替手段として急速に発展した。同時に、インターバンク業務はイノベーションのピークを迎えており、インターバンクの譲渡性預金を用いた資金調達(訳者注:銀行同士で売買される譲渡性預金)やインターバンク理財商品(訳者注:銀行が発行した理財商品をその他の銀行が投資)の登場は、銀行の負債調達方法を多角化させた。つまりは、商業銀行間、さらには商業銀行と非銀行金融機関が連携し、「インターバンクの譲渡性預金—インターバンク理財商品—外部委託投資」という新たなシャドーバンキングの仕組みを作った。この時期の最終的な投資対象は標準化資産(訳者注:銀行間市場及び証券取引所市場で取引される債権性資産)が主であった。実体経済の成長速度の鈍化及び非標準化債権に対する厳しい監督・規制により、信用貸付関連のリターンが徐々に低下し、理財商品やインターバンクで調達した資金も徐々に株と債券などの標準化資産へ流れることになった。2014年下半期から2015年上半期にかけて、理財商品は、異なる形のアンブレラ型投資信託(訳者注:一つの投資信託を傘に見立て、傘の下に複数のファンドを設定。銀行は株式への直接的な投資が禁止されているが、元の投資信託に投資をすることで間接的に株式に投資)等を通じて、株式市場に流れた。その後、株式相場が暴落したことで、債券市場が理財商品やインターバンクで調達した資金最終的な投資先となった。「中国銀行業理財市場年度報告」の統計によると、2016年上半期において、債券に投資された理財商品関連の資金だけで、投資総額の40.4%にも達したとされる。


中国のシャドーバンキングの発展過程から見ると、以下のいくつかの特徴が挙げられる。


第一に、「銀行の中心化」は中国式シャドーバンキングの主な特徴である。銀行の貸借対照表(バランスシート)に計上されるか否かを問わず、信用仲介機能に関わる業務あるいは商品が、シャドーバンキングの中核をなしている。中国式シャドーバンキングの発展の背景には、商業銀行が従来の預貸業務を避け、オンバランスシートの他の業務を利用し、業務のイノベーションを図り、さらに非銀行金融機関と連携して信用拡大を図るというものである。商業銀行と信託銀行、商業銀行と証券会社、商業銀行と保険会社の連携といった融資チャネル業務、買戻し条項付き売却、売掛金投資、インターバンクの譲渡性預金、インターバンクの理財商品などがシャドーバンキングの主要な柱となった。


第二に、リターンの確保はシャドーバンキングによる金融イノベーションが原動力であり、リターンの高さによってシャドーバンキングを通じた資金フローの最終的な行き先が決まる。2009年以降、不動産業、地方融資プラットフォーム及び多くの中小企業の資金調達ニーズは、シャドーバンキングを成長させる重要な原動力となっていた。2013年以降、非標準化債権への投資コストが上昇する一方、リターンが低下した。同時に、株式市場や債券市場といった標準化資産のリターンは上昇し、シャドーバンキングの重要な投資対象となった。シャドーバンキング資金の流入によって、市場流動性がさらに高まるが、レバレッジや資金回転(訳者注:実体経済に流入すべきマネーが金融システム内で循環して資産価格が上昇すること)がバブルを生み出した。


第三に、監督・規制の回避は、シャドーバンキングが発展した直接的な原因といえる。規制回避は中国式シャドーバンキングの商品イノベーションといえる。シャドーバンキングのパターンの変化は往々にして、「誕生—膨張—縮小」という過程をたどる。一般的に一つのパターンの誕生は、既存の監督・規制政策に適合しているが、その業務規模の拡大と金融リスクの増大に伴い、金融監督当局はそれを規制する政策を打ち出す。結果的に、既存のパターンは、規制を回避することができなくなってしまう。しかし、リターン追求を背景に、金融機関は異なる手法を用いて、シャドーバンキングの新たなパターンを作り出す。金融イノベーションと金融監督当局の規制策を巡る駆け引きは、中国式シャドーバンキング発展の全ての過程において常に見られる現象といえる。


シャドーバンキングの発展とともに、リスクの増加が無視できなくなる。商業銀行は往々にしてハイリスクの信用貸付資産をシャドーバンキングに移転する。そして、シャドーバンキングは、監督・規制の対象範囲外で構築したチャネルやインターバンクなどを通じて、レバレッジを高めてリターンを確保する。結果、資金が金融システムの内部でぐるぐると回転し、金融業のシステマティック・リスクが高まる。中国式シャドーバンキングは、主に商業銀行と連携し、オンバランスとオフバランスを使い分けながら、規制・監督を避けることを目的としている。そのため、シャドーバンキング内に蓄積したリスクは、商業銀行に対して、より強く伝播する。今後のシャドーバンキングにおける潜在的なリスクについて、特に以下の二点に関心を払う必要がある。


第一に、リスクを種類ごとに見れば、短期的には、監督・規制や金融政策の変化による流動性リスクの高まりが挙げられる。2013年と2016年の二回にわたる「銭荒(訳者注:市場における資金の不足)」問題の発端は、シャドーバンキングの流動性の一時停止と関係がある。中長期的には、信用リスクが集中的に発生する可能性に対して、より注目すべきだ。途中償還や暗黙の元本保証が存在するため、シャドーバンキング商品のリスクは銀行システムから完全に切り離されたわけではない。商業銀行は最終的にリスクを負う可能性がある。


第二に、銀行の規模で分類すれば中小銀行が抱えるリスクは、大型国有銀行よりも大きい。そもそも中小銀行は大型国有銀行に比べて、規模、顧客などの優位性に欠けている。また、金利自由化の衝撃を受けた中小銀行は、大型国有銀行に比べ、シャドーバンキングに踏み込む強い動機を持っている。2014年以降、中小銀行はインターバンク業務のイノベーションを主導するとともに、理財商品の発行を通じて運用資金も急速に膨らんだ。実際に、中小銀行が抱えるインターバンク理財商品や売掛金関連投資、インターバンク預金などのインターバンク資産・負債の規模は、大型国有銀行を上回っている。中小銀行のシャドーバンキングは急速な発展を遂げてきたが、不安定性を有するため、流動性の縮小や金融監督・規制政策の厳格化が進むと、中小銀行自体がダメージを受ける可能性が高くなる。さらに、そのダメージはインターバンクを通じて、銀行システム全体に伝播するかもしれない。


2017年に入って以来、「レバレッジの縮小・リスクの抑制」は、金融監督・規制の重点となり、一行三会(訳者注:中国人民銀行と中国銀行業監督管理委員会、中国証券監督管理委員会、中国保険監督管理委員会の略称)は、一連の監督・規制政策を打ち出し、シャドーバンキングの既存パターンに大きな影響を与えたといえる。全面的な監督・規制の到来は、規制逃れの余地を大いに縮小させ、膨張し過ぎた理財商品とインターバンク業務の抑制を促すだろう。また、資産管理業務のレバレッジが縮小傾向にあり、複雑な商品構造や資金回転現象も改善し、資金が実体経済へ流れるように導くことが期待される。過去のシャドーバンキングは、監督・規制が整備されていない隙を見つけ、規制逃れを行うというものであったが、イノベーション・コストが低く、模倣も可能であり、競争力に欠けていた。全面的な監督・規制到来により、シャドーバンキングの「粗放な」発展は長続きし得なくなった。将来的には、中国のシャドーバンキングは、規範化、証券化、高級化の方向に進み、不良債権の証券化、貸付資産の譲渡、債務株式化などが、発展の新たなパターンになると見込まれる。

(2017年7月発表)


※掲載レポートは中国語原本レポートの和訳です。

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