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中国社会科学院「四つの矛盾を効果的に統括し、経済の着実で持続的な発展を促進する」

2017年07月04日

鄭聯盛

近頃、中国の経済は短期的に下げ止まり、回復し始めたが、経済の長期的かつ持続可能な発展及び経済構造と発展モデルの転換を効果的に実現させるために、経済の短期と長期の動向、政府の政策と市場メカニズム、金融部門と実体経済、及び政策効果の協調に関わる「難題」を効果的に統合し、穏健かつ有効なマクロ経済政策を実施する必要がある。


短期と長期


2016年の中国経済は全体的に適度な成長を遂げ、年後半の四半期GDP成長率が小幅に上昇し、第4四半期は前年同期比6.8%となった。全体としては下げ止まり、また小幅に改善されていく傾向を示している。2017年第1四半期も、中国経済は下げ止まり傾向を保ち、同6.9%の成長率を実現した。景気動向と先行指標を見れば、ミクロの経済主体が確実に最悪期を乗り越え、安定的に回復していることが確認できる。2017年3月まで、PMIは6ヵ月連続で51を上回った。


経済が短期的に下げ止まり、回復したのは政府の安定成長を確保する政策によるものであり、インフラ投資の牽引効果は明らかである。また、世界経済の回復とともに、経済成長に対する外需の寄与も比較的顕著になってきた。経済の短期波動を反映する在庫循環の趨勢から見れば、2016年初めが周期の最低水準にあり、2016年第2四半期から始まった在庫積み増しのプロセスが継続し、経済情勢は短周期の回復段階にあることが分かる。


短期的に回復傾向を見せているとはいえ、中国は依然として安定的な経済成長の原動力を欠いている。景気循環及びその「ネスティング」理論によると、一国の経済成長率は、短期波動が在庫循環(3~4年)の影響を受け、中期的な成長率が主に設備投資循環(8~10年の循環)の影響を受ける。この中期循環においては、新たなリーディング産業が現れてくることが一般的である。しかし、目下のところ、新たな設備投資循環の開始の兆しが容易には現れず、それに対して、インフラ投資による短期的な景気の下支えが行われている。


短期と中長期の成長率にとってより本質的なことは、短期的には経済の安定化、中長期的には経済成長率への下方シフトの圧力が、潜在成長率の変化と緊密に繋がっていることである。中国の潜在成長率は正確には測定しがたいが、様々な生産要素が十分に利用され、潜在成長率に明らかな趨勢的変動が生じている時、名目成長率を意図的に維持しようとすれば、資源配分上の不均衡を招く恐れがある。こうした状態を長く維持するほど、経済が内包するリスクが大きくなると考えられる。


市場と政府


中国経済が好転する中で、経済成長の原動力の構造に大きな変化が生じている。第一に、政府投資が民間投資の不振を補ったこと。第二に、経済成長に対する不動産市場の寄与が明らかに高まったこと。第三に、消費部門が全体的に安定する傾向を示しており、とりわけ住宅と自動車の需要増加によって経済成長に対する個人消費の寄与度が高まった。しかし、住宅と自動車の消費需要の拡大は政府の政策と緊密に関連している。


2016年から2017年第1四半期にかけての経済成長と構造変化を振り返ると、政府の政策が重要な役割を果たしたことが分かる。インフラ、不動産取引、自動車販売には、いずれも政府介入という「見える手」が影響を与えている。また、さらに遡れば、政府のコントロールによって、中国経済に3~4年間の短周期の波動が生じている。この「在庫循環」あるいは「キチンの波」は、政府の周期的な介入を受けたことの特徴を表している。


政府の政策は、経済の安定した発展の中で積極的な役割を果たしてきた。しかし、それはいくつかの副作用をもたらした。第一に、政府資産の大規模な膨張である。過去3~4年間、国有部門が全体的に拡張状態にあり、それによって政府資産の規模が拡大し続けている。特に金融部門の急速な膨張である。2016年の中国の銀行業の資産総額は、232兆元にまで増加した。第二に、政府資産の拡大が民間部門にクラウディングアウト効果をもたらしたことである。民間部門のバランスシートの拡大ペースは政府部門と比較して遅く、一部の分野では、バランスシートの縮小さえ生じた。今のところ、政府資本と民間資本の協力(PPP)及び産業投資ファンドの中で、民間部門の参入率は依然として低く、多くの国有の金融部門が社会資本として幅広く参入している。第三に、収益とリスクが日増しにアンバランスな状態になる恐れがあることである。政府または国有部門が資源配分に介入することは、ある程度、市場予測の安定化と経済成長の確保に有利ではあるが、介入しすぎると、その効用は逓減し、極端な場合、リスクが収益を上回る状況に至る可能性もある。


経済の持続可能な発展という観点から見れば、資源配分における市場の決定的な役割を発揮させることが非常に重要である。例えば、今後の経済構造の転換において、新たな設備投資循環は、政府部門ではなく、民間部門が主導権を握るべきである。しかし、中国の民間投資はまだ比較的低いレベルにあり、今後の新たなリーディング産業をまだ見通すことができないため、ミクロ的基礎をしっかりと固める必要がある。


生産量と価格は経済活動の中心的な変数であり、その変化が二つのメカニズムを生む。一つ目は需要曲線と供給曲線の相対的変化であり、二つ目は政策の相対的変化である。この二つのメカニズムの本質は、資源配分における市場の役割と政府の役割とのバランスにある。過去三回の経済成長の短期循環の中で、政策の役割が強化されていったように見える。これは需要曲線と供給曲線を移動させただけではなく、その勾配にも目立った変化をもたらし、かえって今後の政策の余地を制約してしまったのである。安定を保ちつつ経済成長を促すという目標を実現させるには、政府の介入だけでは不十分であり、市場経済の主体として、ミクロ経済の主体の地位と市場の資源配分の機能を強化し、両者を効果的に融合させなければならない。


金融と実体


過去10年、中国経済は著しく発展した。しかし、経済成長よりも急速に成長したのは金融部門である。銀行業を例に取ると、2006年から2016年まで、総資産額は、44兆元から232兆元へ5.3倍に増加したのに対し、同時期の名目GDPは3.4倍の増加にとどまった。2016年末に欧州を超え、中国銀行業の規模が世界最大となった。中国、欧州、米国及び日本の銀行業は世界トップ4として、資産規模がそれぞれ33兆ドル、31兆ドル、16兆ドル、7兆ドルに達している。中国の銀行業の資産規模は国内総生産の3.1倍であり、欧州、米国、日本のそれを遥かに上回っている。


金融部門の資産の伸び率が長期にわたり経済成長率を超えることは、「脱実向虚(実体経済から乖離して、非実体経済へと向かう)」を引き起こしかねない。例えば、債券市場の改革発展において、円滑な貯蓄から投資への転換メカニズム、または直接金融システムの構築に力を入れるべきである。しかし、現在の債券市場の構造は、銀行間取引市場、取引所市場及び商業銀行の店頭市場からなっている。この三種類の市場は、大部分の一般企業や家計には無縁の銀行、ノンバンク及び大型国有企業等を主体とするものとなっている。一方、債券市場の直接融資機能とは金融機関に主な資金を提供することではなく、家計または非金融企業の貯蓄を非金融企業部門の投資に転換させることである。債券市場のレバレッジ取引を顧みると、資金空転(実体経済に流入すべき通貨等が金融システム内で循環して資産価格が増加すること)の問題がある程度存在している。


また、銀行部門の資産負債管理を振り返ってみると、経済成長の下振れ、信用リスクの顕在化及び金利自由化のプロセスの中で、「預金業務を銀行業の基本とする」という伝統的な負債の考え方だけでは、資産配置の新たな需要を満たせず、銀行間取引や債券発行が主流となった。そのため、オーバーナイト取引の規模は2015年2月の1.34兆元から2016年8月の9.44兆元まで急増した。2016年8月以降、中国人民銀行が金融部門のレバレッジ削減に取り組み、成果を収めたが、2017年3月のオーバーナイト取引の規模は依然として6.77兆元の高いレベルにある。さらに注意すべきことは、2016年9月、中国人民銀行が銀行間取引市場の流動性を引き締める中で、銀行間預金は金融機関が負債を維持する主要な方法となり、2016年の新規銀行間預金の平均月間増加量が約1兆元に上り、2017年2月と3月にはそれぞれ1.97兆元と2.02兆元に達したことである。


金融部門と実体経済との関係が乖離する根本的な原因は、実体経済が生み出す収益率の低下、すなわち金融部門が直面している「資産収益率の低下(商業銀行の運用面から見ると、資金はあるが運用先が見つからない状態)」の問題である。実体経済の収益率の低下は経済成長率の低下と関わっており、必然のことだと言える。しかし、金融部門がまだそれに適応できず、積極的な調整を行っておらず、最終的には銀行間取引ひいてはレバレッジ取引により、資産収益率の低下とリスクプレミアムの上昇を相殺することになる。こうした資産と負債のミスマッチは、政策の引き締めに対して脆弱性を露呈しがちであり、流動性減少が銀行間取引における問題を引き起こす恐れがある。最終的に、金融機関が「資産側の不足」と「負債側の不足」の二重の圧力に直面することになる可能性も想定できる。


良好な経済のファンダメンタルズは、金融が効果的に実体経済に影響を及ぼすための基礎である経済成長のプロセスで、金融部門が供給した資本がなぜ効果的に吸収されないかについて、より一層の見直しを行うべきである。金融部門はリスク管理者であり、リスク回避者でもある。リスクを識別する時、金融機関は資本を実体経済に使うことと金融部門自身に使うことのコストとベネフィットを分析すべきである。本質的に持続可能な実体経済を構築することは、金融と実体経済との関係を調整し、実体のないバーチャルな経済から離脱し実体経済へ回帰(「脱実向虚」から「脱虚向実」へ転換)するための基礎となる。


リスク政策と政策のリスク


資源配分において、中国政府は重要な指導的役割を果たした。この政府の役割は、過去40年間の改革開放の中で、正しく堅持すべきものだと証明された。もちろん、こうした政策論理と具体的な政策手段を今後、一層完備する必要がある。現在、中国はリスクが日増しに顕在化する段階にあり、内外のリスクが共振する危険に晒される可能性が高い。そのため、リスクの防止と制御が、より重要であると位置づけられた。政策の実施には指向性、合理性及び有効性が必要とされている。すなわち、リスクの防止と制御対策の有効性及び政策そのものが引き起こしかねないリスクを検討すべきである。


例えば、過剰生産能力は、中国の経済成長の中で益々顕著になってきたリスクである。2016年以来、供給側の構造改革としての「過剰生産能力の解消、過剰在庫の消化、レバレッジの削減、コストの引き下げ、脆弱部分の補強」といった5大目標をめぐって、関連部門が過剰生産能力の解消策を打ち出し、ある程度需給不均衡を緩和させた。過剰生産能力解消のプロセスで、2016年3月末、石炭企業の稼働日数が年間276日以下に規制されたが、同年9月以降実施した石炭供給の二級緊急対応策ないし一級緊急対応策(訳者注:一級緊急対応策は動力炭の価格が500元/トンに上昇した時、一日平均50万トン増産を認めるもので、全国74炭鉱が対象。二級緊急対応策は動力炭の価格が480元/トンに上昇した時、一日平均30万トン増産を認めるもので、山西省、陝西省、山東省などの66炭鉱が対象。)によって、一部の石炭企業の作業日数が330日に増えた。


政策を実施する時、政策の適性を検討しなければならない。例えば、実施する政策が多すぎるのか、少なすぎるのか?どれが確実に実行されたか?その効果はどうか?経済の長期的かつ持続可能な発展及び効果的なリスク防止と制御には、より一層科学的かつ完全な政策決定、実施、評価体系が必要とされている。

(2017年4月発表)


※掲載レポートは中国語原本レポートの和訳です。

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