中国社会科学院「六つの問題を調整し、混合所有制が「混同経済」となるのを防止する」

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2014年10月31日

  • 鄭聯盛

混合所有制(国有企業や民間企業などが相互に資本参入する制度)の発展はすでに一つの潮流となっている。だがその発展過程において、混合所有制の本質、国内改革の経験、外部からの示唆に基づき、市場化、主導性、整合性、自発性、公開性、規範性の六つの問題をしっかり解決していくべきである。


「混合」を安売りしない


混合所有制の発展で最も基礎となるのは、国や民間等の異なる所有による企業等の主体が相互に交わって融合することであり、こうした融合にともなう過程での必然は財産権の取引である。財産権の取引を完成させるには、財産権の価格の評価が最も中心となる作業である。過去の国有企業改革であれ、海外の国有企業改革であれ、財産権とその価格評価メカニズムは改革の核心的な問題であり、最も非難に遭いやすい問題でもある。混合所有制企業が形成される過程において、財産権の価格評価は原則的に会計基準と市場の価格水準に従うべきである。もし民間資本が純資産価格より低い価格で国有資本に譲渡されたならば、そのトップは大きな野望を持っていると評されるかもしれない。だが、国有資本が純資産価格より低い価格で他の民間等資本に譲渡されたとしたら、それは疑いなく、「国有資産の安売り」「国有利益の移転」というレッテルを貼られるに違いない。たとえば、登録資本金が数千万元しかない民間企業が千億元の資産を保有する国有企業の15%を超える株式を取得したら、一般の人は取引価格に大きな疑問を持つであろう。混合所有制を発展させるには、国有資産の管理体制、国有資本の機能の位置づけ、財産権の転化メカニズムを更に整備し、「混合」がブームのように安売りされることがあってはならない。


国有資本は主体としての地位や主導的役割を維持できるのか


仮にある国有企業が4つの他の民間資本やその他所有の資本を引き入れ、5つの株主が均等に20%ずつ株式を分けたとする。国有企業はこれまでの100%から20%のみの持株比率となる中で、国有資本の企業内における地位のあり方や主導的役割の発揮はどのようになっていくのであろうか?重大な決定を行う際に、持株比率のみに基づくと国有資本が議案を否決する立場は当然弱くなる。しかし、混合所有制改革の本質は、国有資本の主導性を弱めるためではなく、資源の効率配分を提供するという基礎の上に国有資本が国民経済の中で主導的な役割を果たすことを固めるものである。


異なる所有制主体間の整合性と融合性


混合所有制の目的は、資源の有効配分のため生産要素を有効に組み合わせ、多種の資本の強みを十分に発揮し、互いを補って融合発展していくことである。産業構造、競争状況、資本機能の位置づけ、所有制の構造などに対して分類管理や指導を行い、「混合」の主体が参入してくる際には参入する市場における整合性と融合性を重視しなければならない。参入条件を緩和することは条件をなくすということではない。異なる業種の属性と、関連性、融合性に注意して区別する必要がある。実際の状況がよくわからない一般の人は恐らく、情報産業、資源エネルギー、酒類製造販売などを中心業務とする大型国有企業と住宅リフォーム会社が「混合」する意図がどこにあるのか、混合した後、互いの強みを発揮して補い、有効に融合できるのかという点について疑問を持ち、混合所有制の「混合」は「混同」ではないことを理解しがたいかもしれない。


民間資本の自発性を尊重しなければならない


混合所有制は双方向性を特に強調しており、民間資本は国有資本とその運営に参画し、国有資本もまた民間資本及びその運営に参画して、相互に株式保有を行い、運営の融合を実現することが可能である。しかしながら、現時点では、いかに民間等資本を引き入れるか、いかに国有と民間等資本の関係を協調させるか、いかに平等に民間等資本の権益を扱うかなど、依然として全体的な枠組みの整理が不足している。政府及び国有企業は行政の力や競争上の優位性を利用して民間等資本と国有資本の「混合」を「併呑」へと変えるべきではない。


情報公開の原則を堅持しなければならない


国有資本が民間資本を引き入れたり、民間資本が国有資本を引き入れたりして資源配分効率の向上を実現したいのであれば、公平、公正、公開の理念に基づいて情報開示を進めていくべきである。意思決定を強化するために、全ての関連主体に十分な情報を与え、関係各方面との取引コストを下げ、公共による監督システムを形成しなければならない。大量の情報が溢れる現在、大衆や世論は異なる情報ソースを通して混合所有制進展の様々な取引状況や情報を得て、取引の公平性を見分けることが可能である。「ブラックボックス」の中で操作するより、情報を公開して進めていくべきである。混合所有制改革をインサイダー取引の温床にしてはならない。


混合所有制を発展させるにはトップダウンの設計をしっかりと行わなければならない


政策担当者や関連部門は、混合所有制の発展についてトップダウンで設計を行うが、制度の枠組みだけでなく、重点的な問題について基本的規範を作り、鍵となる指標に参考となる目安を設けるべきである。一、混合所有制の基本制度、特に国有資本の機能の位置づけと管理体制などを整備する。二、どのような業種が「混合」所有になることが可能か明確にする。もしくは「ネガティブリスト」を作り、どの業種が「混合」すべきでないか説明する必要がある。三、国や民間等の資本が相互に「混合」する際の基本的な規則や、平等、公開、整合性など付帯する仕組みを設置する。四、財産権の譲渡や変更についての基本的な財務規範と指標体系、特に資産の価格評価メカニズムを構築することである。最後に、監督管理システムを強化し、資本とその機能の運営についての監督管理に重点を置くこと。つまり、混合所有制経済の発展が「混沌」経済となることを厳重に防止しなければならない。

(2014年10月発表)


※掲載レポートは中国語原本レポートの和訳です。

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