本レポートは、2006年~2010年の期間、上海証券取引所と深圳証券取引所に上場していたA株・B株企業1,344社をクラスター分析によって労働集約型、資本集約型、技術集約型といった三グループに分類し、グループごとにコーポレートガバナンスが技術革新に与える影響について比較や考察を行った。分析の結果、三グループ間の共通点と相違点が判明した。共通点は、株主順位が第二位から第十位までの株主に加え、ファンド、役員など上級管理職の持株比率が高いほど、研究開発投資比率が高くなることである。相違点は、資本集約型企業では第一位株主の国の持株比率と研究開発投資に正の相関がある一方、技術集約型企業では技術者へのストックオプションの付与が技術革新に対して明らかにプラスの影響が見られることである。さらに分析を進めた結果、市場化が技術革新の推進力となることも判明した。本レポートでは、コーポレートガバナンスを各グループの特徴に合わせたものとすることによって技術革新を促進すべき旨を主張している。これは、新構造経済学(訳者注:市場の役割を重視しつつ、一方で比較優位の将来的な変化に対応するために、政府もインフラ整備等の面で重要な役割を担うべきだとする考え方)をミクロレベルで応用・拡張したものであり、中国の産業のレベルアップと経済構造転換の際に参考となる。
(2014年6月発表)
※掲載レポートは中国語原本レポートにおけるサマリー部分の和訳です
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