2013年12月3日から14日にかけて、筆者はタイ国家研究評議会(National Research Council of Thailand, NRCT)の客員研究員として、タマサート大学とチェンマイ大学などの学術機関を訪問した。訪問した時期は、反政府デモの影響で政局が不安定となっており、それによってバンコクの情勢が非常に緊張していたことから、当初訪問予定だったチュラーロンコーン大学や財務省、中央銀行などを訪問することができなかった。しかしながら今回の訪問を振り返ってみると、タイのマクロ経済に対する正確な認識を得ることができた。その中の多くは、中国経済の発展に対して多くの示唆を与えるものであった。
現在、タイのマクロ経済はインフレ率と失業率の上昇圧力は比較的小さいものの、成長の原動力については楽観できない。米国のサブプライムローン問題や欧州債務危機の影響を受け、タイのGDP成長率は2009年と2011年にそれぞれ前年比▲2.3%、同+0.1%と低水準に落ち込んだ。その後2012年は同+6.5%と上昇に転じ、特に2012年第4四半期のGDPは前年同期比で19%も伸びた。経済が明らかに好転している中で、2013年10月のCPI(消費者物価指数)の総合指数とコアCPIは前年同月比でそれぞれ+1.46%と+0.71%にとどまり、PPI(生産者物価指数)は同▲0.1%と下落に転じ、失業率は0.6%まで低下している。表面的には、タイ経済は高成長と低インフレの両立に成功した黄金期にあるようにみえる。しかし、GDPを需要項目別に見ると、現在のタイの消費、投資、輸出すべてが減速しており、成長エンジンを見出せないことが問題となっている。
※掲載レポートは中国語原本レポートにおけるサマリー部分の和訳です。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
金融リスク抑制の十年を点検する
2018年09月20日
-
中国社会科学院「今後の不良債権に対応するために実施すべき三つの方策」
2018年03月08日
-
中国社会科学院「中国のシャドーバンキングの発展段階、主な特徴、潜在リスク」
2017年09月01日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日