2013年10月 「都市化をどのように定義するか、中国共産党第18期 三中全会の焦点」

RSS

2013年11月08日

  • 易憲容

第4四半期に入り、中国経済に対する希望が市場に満ち始めている。第一に、最近発表された国内経済に関するデータが概ね市場の予測を上回ったこと、第二に11月に開催される中国共産党第18期 中央委員会第3回全体会議(以下、三中全会)において重大な経済改革や政策が発表され、中国経済が新しい方向へと進んでいくのではないかとの期待を市場がいただいていることが要因として挙げられる。


新政権発足以来、市場は大きな希望を抱き続けてきた。特に中国共産党第十八回全国代表大会後、急速な経済成長を再び政策目標に置かず、効率的かつ新しい成長モデルによる経済成長が提唱されたことで市場の期待は更に高まった。その後の「リコノミクス」も確かにこの方向性に沿うものである。マクロ経済政策の変更、政策の重点項目の変化、上海自由貿易試験区の開設などの措置は新たな経済政策の表れであり、政策や三中全会に対する期待をより高めることとなった。


それでは、市場は三中全会に一体何を期待しているのだろうか?それは、この会議において重大な政策が発表され、それによって国内経済がここ10年の「不動産投資依存」による経済成長の負の遺産を乗り越えて、経済成長モデルの転換および経済発展戦略のバージョンアップが促されることで、中国経済が持続的かつ健全な成長へと進んでいくことを望んでいるのである。


この目標を実現するには、三中全会が都市化をどのように定義するかという点に焦点があり、都市化を経済成長方式の転換や、内需拡大の原動力として活用できるかどうかによると筆者は考えている。


すなわち、中国における都市化は「農民を市民へ変える」都市化でなければならない。多くの農民を都市へ移住させるにあたり、ここ10年において農民を都市文明の恩恵に浴するプロセスから排斥し、経済成長の成果を享受させなかったこととは逆に、「農村と都市、沿海地区と中西部地区、大・中都市と小都市、それぞれの間にある三大格差」を縮小させる都市化を目指すべきである。もし中国における都市化がこのような基本原則の上に進められないのであれば、中国が健全な発展の道を歩むことは不可能である。また、この目標を達成するには現在の重要な制度に対して一連の改革を行わなければならない。


まず、戸籍制度を改革し、農民に自由な移動の権利を保証する。農民がどの都市へ移住するかは、完全に自由選択による(もちろん、都市への転入に関する申請基準を設定することができないわけではないが、それでも転入のハードルは低く、公平であることが保証されなければならない)。そうして、農民は基本的な市場の論理に則り転入可能な都市へ移動し、都市における基本的権利を享受して真の市民となることができるのである。こうして都市住民の消費力を拡大できれば、内需拡大の発展戦略が実現できる。そうでなければ、都市化は農民を都市住民へと変えるだけの空論となってしまう。


次に、中国の土地制度に対して重大な改革を進めていく。土地管理制度を憲法の基本原則に基づいて改革を行い、真の不動産取引市場を作り上げるべきである。これは広範な中国の農民に経済成長の富の配分をもたらし、都市転入に際しての経済的基礎となる。その上で、農民が都市へ移住すれば、これは都市の需要拡大の原動力となり、また農村の人口構成、生活様式、生産体制などの面に大きな変化が起こるはずである。土地制度改革の成功が中国経済の持続的で安定的な発展の起点となるであろう。


三つ目は中国経済を「不動産投資」依存の政策から脱却させることである。経済成長の「不動産投資」への依存は、国内産業構造の調整、経済発展モデルのバージョンアップ、国民の所得分配の均等化、調和の取れた社会の実現、社会における利害関係の調整などの障害であるだけでなく、都市化の健全な発展にとっても重大な障害である。したがって、中国経済が「不動産投資」に依存している現状を修正しなければ、都市化の健全な発展は不可能である。


このほか、三中全会では政府権能を再定義することにより、政府を市場規則の制定者・管理者と位置づけるかどうかが注目される。上海自由貿易試験区の設立に見られるように、政府は新しい経済成長モデルの確立を願っており、それは、こうした経済成長モデルが国際市場と連動して、市場経済体制を貫徹させることで、政府権能に真の転換を迫るためである。しかし、現在の状況から見ると、この重大な改革に対し、新政権はいまだ慎重な態度を取らざるを得ない。


三中全会に対して市場は上述の制度改革以外にも強い期待を持っている。それは国有企業経営や、シャドーバンキングなど金融市場の面で重大な改革や新たな政策が提出されることである。しかしながら、実際の状況については更なる観察が必要であり、同時に抵抗も多い。


※掲載レポートは中国語原本レポートにおけるサマリー部分の和訳です。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。