2008年に世界金融危機が発生して以来、先進国の危機対応政策といった負の外部性及び中国経済の相対的な実力の上昇により、中国政府は積極的に人民元の国際化を推進するようになった。韜光養晦(才能を隠して姿勢を低く保ち、強くなるまで待つ)戦略、発展途上国の立場、金融国際化の見通しの不確定性などから、中国政府は人民元の国際化について正式な態度を表明するのを避けている。中国政府が推し進める人民元国際化の政策は3つの主軸に沿って展開されている。それは、貿易と投資における人民元決済の推進、オフショア人民元市場の発展の促進、各国の中央銀行間との通貨スワップ協定の署名である。これまで、人民元決済とオフショア人民元市場の発展には明らかに進展が見られるものの、同時にオフショア市場とオンショア市場間での裁定取引によって利ざやを得る行為が多発する問題も現れてきた。中国経済が持続的で速やかな成長を維持し、中国の金融市場が持続的に発展できれば、経済および金融危機の発生を避けることができ、人民元は10年から20年の間に主要な国際通貨に成長する可能性がある。人民元の国際化を推し進めるために、中国政府は国内の構造改革を速やかに行い、国内の金融市場の改革と対内開放を加速し、資本取引の速すぎる開放を避け、対外直接投資の人民元決済を促進し、人民元が国際的な価値保蔵手段となることを推進するべきである。
※掲載レポートは中国語原本レポートにおけるサマリー部分の和訳です。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
金融リスク抑制の十年を点検する
2018年09月20日
-
中国社会科学院「今後の不良債権に対応するために実施すべき三つの方策」
2018年03月08日
-
中国社会科学院「中国のシャドーバンキングの発展段階、主な特徴、潜在リスク」
2017年09月01日
最新のレポート・コラム
-
消費データブック(2025/6/3号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2025年06月03日
-
テキサス州による議決権行使助言業者規制
財務的利益以外の要素を考慮する助言である場合、その説明を求める
2025年06月03日
-
2025年1-3月期法人企業統計と2次QE予測
前年比で増収増益も製造業は不調/2次QEではGDPの下方修正を予想
2025年06月02日
-
李在明氏の「K-イニシアティブ」を解明する
大統領選で一歩リードしている李在明氏は、韓国経済と日韓関係をどう変えるのか
2025年06月02日
-
“大規模で美しい”軍事パレードはピーナッツか、それとも特大のプレゼントか
2025年06月04日
よく読まれているリサーチレポート
-
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
-
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
-
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日