マクロ経済学者は時間序列を用いて習慣的に4つの項目(トレンド、周期、季節、不規則要素)に分類する。この分類の良い点は分析方法を項目ごとに応用できることである。この分類は時にマクロ経済予測の精度を高める助けとなっている。
本レポートにおいて注目しているのは中国のGDP成長のトレンドであり、次の二つの問題を主に討論している。中国の経済成長のトレンドの変化の原因と将来について。そして、政府がこのような変化の過程において打ち出すべき政策である。
30年に及ぶサンプルデータを見ると、現在中国のGDP成長速度は鈍化している。これについてよく見られる説明に、労働供給の伸び率の低下がある。これには理論的支えがあり、事実にも基づいていることから、主な議論はこの力がどの程度大きいかということになる。しかし、本レポートが注目するのは別の角度、すなわち「生産性」の面からの議論である。
過去30年、表面的には全ての業種で生産性が向上した。しかしそれを主に牽引したのは製造業である。製造業の生産性の向上がエンジンとなり、その他の業種はそれに牽引されたのである。基本的な論理は次のとおりである。市場化改革と開放政策が製造業の企業家と労働者の人的資源(知識、技能、管理経験を含む)を高め、物質資源の速やかな蓄積が製造業の生産性を迅速かつ持続的に向上させた。製造業の生産性の向上は収入の増加となり、同時に農業、サービス業、建設業の需要の増加や政府の税収および土地価値の上昇をももたらした。高まり続ける需要に加え、政府の投資による支えもあって、製造業以外の業種の相対価格の上昇も速くなり、最終的にはその他の業種の生産性の進歩も見られた。我々は結果から各業種の生産性の進歩を目にしたが、これはたとえば飛行機が速く飛んでいるように見える原因は乗客座席にあるのではなく、製造業の生産性向上と同じように飛行機の翼に隠されたエンジンにある、ということである。
上述の論理にはまだ多くの細かな点があり、中でも鍵となるのは①なぜ市場化改革と開放政策が製造業の生産性を迅速かつ継続して向上させることができたのか、②これらの政策がもしサービス業で行われた場合にも同様の成長効果をあげることができるのか、といったことである。現在の見方ではそれは不可能である。インセンティブのメカニズムを変えることについて、市場化改革と開放政策が人々の労働意欲を刺激する効果はほとんど同じであるが、生産性の向上という効果については差が大きくなる。その主な原因は次の二つである。
一つは、製造業は他の進んだ企業の模倣や学習が容易であり、効率の上昇がより顕著である。
そして、製造業は資金調達のハードルが低いことから、効率の上昇を一層持続することができる。
※掲載レポートは中国語原本レポートにおけるサマリー部分の和訳です。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
金融リスク抑制の十年を点検する
2018年09月20日
-
中国社会科学院「今後の不良債権に対応するために実施すべき三つの方策」
2018年03月08日
-
中国社会科学院「中国のシャドーバンキングの発展段階、主な特徴、潜在リスク」
2017年09月01日
最新のレポート・コラム
-
消費データブック(2025/6/3号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2025年06月03日
-
テキサス州による議決権行使助言業者規制
財務的利益以外の要素を考慮する助言である場合、その説明を求める
2025年06月03日
-
2025年1-3月期法人企業統計と2次QE予測
前年比で増収増益も製造業は不調/2次QEではGDPの下方修正を予想
2025年06月02日
-
李在明氏の「K-イニシアティブ」を解明する
大統領選で一歩リードしている李在明氏は、韓国経済と日韓関係をどう変えるのか
2025年06月02日
-
“大規模で美しい”軍事パレードはピーナッツか、それとも特大のプレゼントか
2025年06月04日
よく読まれているリサーチレポート
-
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
-
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
-
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日