2013年3月 「2013年第一四半期 中国対外投資レポート <摘要>」

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2013年05月09日

  • 李国学
  • 王永中
  • 世界経済・政治研究所 張明

2012年の中国の対外直接投資(Outward Direct Investment、以下ODI)のフローとストックはともに過去最高となり、それぞれ772億米ドルと4,432億米ドルに達した。中国のODIのストックが全世界に占める割合は2012年末で2%に満たないが、ODIのフローが全世界に占める割合は近年急速に上昇しており、2003年の0.5%から2012年の6.0%まで上昇している。


中国のODIの額を地域別に見ると、2012年は主に北米、ヨーロッパ、オセアニアに集中している。この3地域への直接投資額が全体に占める割合はそれぞれ45%、17%、15%であり、合計すると77%に達する。またODIのプロジェクト数を地域別に見ると、2012年は主にアジア、北米、ヨーロッパに集中している。この3地域に対する直接投資のプロジェクト数が全体に占める割合はそれぞれ57%、17%、12%であり、3地域の合計は86%になる。オセアニア、北米、ヨーロッパにおいてはプロジェクトの平均投資額が比較的高く、アジアとアフリカは非常に低くなっている。国別で見ると、自然資源が豊富な国と経済発展レベルが比較的高い国に中国のODIは集中している。金額とプロジェクト数のTOP10に両方とも入っているのは、カナダ、米国、オーストラリア、ドイツ、インドネシア、ロシアである。ODIのプロジェクトごとの平均投資規模からみると、カナダ、オーストラリア、インドネシアがTOP3となっている。


ODIの額を産業別に見ると、エネルギーと金属類向けが全体の2/3を占めている。運輸業への海外直接投資は総額の9%を占めているが、この傾向については今後も継続して注目していく必要がある。情報通信、金融など技術集約型サービス業への投資規模は比較的小さい。一方、産業別にプロジェクト数を見ると、各国に対するカバー率は産業によって差が見られる。鉱業への投資ではアジア、南米、アフリカの国家に対するカバー率が高い。石油業への投資では北米、アジア、南米の国家に対するカバー率が高くなっている。新エネルギー業界への投資についてはヨーロッパ、北米、アジアの国家に対するカバー率が高い。大規模プロジェクトの受注ではアジア、アフリカ、南米の国家へのカバー率が高い。


2012年の中国の対外証券投資は明らかに多元化の傾向を示している。具体的には、①米ドル建ての証券資産の構成は引き続き多元化の方向にある。株式や長期の社債等のリスク資産の割合が明らかに上昇しており、国債と長期の政府機関債の割合は少しずつ下降している。②外貨準備の資産構造は引き続き多元化の傾向にある。国家外貨管理局は一部の資金を上場企業の株式やプライベートエクイティにも割り当てることに力を入れている。③外貨準備投資メカニズムの刷新。外貨準備の委託貸付プラットフォームの設立は、中国の外貨準備投資の委託機関が以前の単一の外資機関から国内、外国資本の金融機関も行えるように転換したことを意味しており、外貨準備投資も単純な海外市場への投資から対外投資と国内企業の「走出去」(海外進出)支援も行うようになった。だが、対外証券投資における通貨の多元化は進んでいない。2012年12月末、中国が保有する米国の金融資産の規模は1兆6,533億米ドルとなり、前年より576億米ドル増加し、中国の外貨準備に占める割合は52%となった。この数字は2011年末の割合とほぼ同じ水準である。


中国、日本、イギリス、その他経済国による米国の金融資産への投資手段について比較分析を行ったところ、次のような結論に至った。①まず期間の面で中国、日本、イギリス、その他経済国は類似している。いずれも主に長期の金融資産に投資を行っているが、中国の投資割合はきわめて高い。②中国が保有する長期証券投資は、長期国債の割合が非常に高く、長期の政府機関債の割合も高い。ところが株式の割合は逆に低く、社債の割合はきわめて低い。このような投資構造は信用リスクが比較的低くなるものの、その分投資収益率は低くなる。固定金利の長期債券の比率が高すぎることから、中国が保有する米国の金融資産は金利やインフレの影響を非常に受けやすくなっている。③短期証券投資については、中国が保有する短期国債が全体に占める割合はきわめて高いが、短期社債が短期証券に占める割合は極端に低くなっている。


 


※掲載レポートは中国語原本レポートにおけるサマリー部分の和訳です。

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