2013年に入ってから、とりわけ最近は人民元の対米ドル直物相場(スポットレート)が立て続けに高値を更新し、各界から注目されている。
短期的に人民元の直物為替相場が最高値を更新すれば、市場の期待に影響を与え、元高圧力が強まるであろう。しかしながら実体経済を考慮すると、国内需要が引き続き弱いことから、為替相場の大幅な上昇は見込めない。 国内外の経済情勢を総合すると、2013年の米ドルに対する人民元の上昇幅には限度があり、小幅な上昇となる可能性が高いと予測できる。実際、この7年間で人民元は米ドルに対して実質で30%上昇し、既に均衡水準に近づいた。人民元が引き続き大幅に上昇することは現実的ではない。
もちろん人民元相場を安定し続けると同時に、市場化改革をできるだけ急がなければならない。
①まず、人民元相場の弾力性を更に高め、対米ドル仲値(TTM)の変動幅を大きくする。現在は人民元の対米ドルの変動幅に限りがあることから、中央銀行はドルの買い入れを通して相場に介入しなければならない。このようなコストが比較的高い為替相場政策を持続することは明らかに困難である。
②次に、為替レートが決定する基礎をさらに整備する。現在の人民元相場は依然米ドルを基礎としている。外国為替取引センターは、毎日マーケットメイカー各行が提示する価格から米ドルの仲値を公表した後で、他の通貨に対する為替相場が計算されるため、人民元の総合的かつ有効なレートをタイムリーに形成することが難しい。そこで、人民元と米ドル以外の通貨の直接取引を促進し、適切に「通貨バスケット制を参考」にした為替相場の構造改革を推し進めていくべきである。
③そして、外国為替市場の拡大、刷新、国際化を促進する。外国為替市場は世界各地に存在し、巨大で流動性の高い国際金融市場の一つである一方、わが国の銀行間の外国為替市場は相対的に閉鎖され、規模も小さく、十分な価格形成機能がない。そこで資本項目の改革に伴い、徐々に外国為替市場の深度や範囲を拡大し、内外の市場参加者への関与拡大などを考慮する必要がある。同時に、現存の外貨金融商品が人民元の先物とスワップのみと著しく不足していることは、為替相場のリスク管理に困難をもたらすだけでなく、市場取引の効率も限定的となってしまう。このため、外貨派生商品の刷新を進めることは、外国為替全体の構造改革に対して有効となりうる。
※掲載レポートは中国語原本レポートにおけるサマリー部分の和訳です。
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