サマリー
◆2021年7月下旬に住宅コストと教育コストの引き下げ策が相次いで発表された。これは少子化対策の一環と位置付けられるが、特に後者については学校以外の教育業界の存続が危ぶまれるほどの厳しい措置である。昨年来のITやインターネット・プラットフォーム企業に対する締め付け強化と合わせ、若年層の失業率上昇につながらないか、注意が必要である。
◆2021年7月、もしくは1月~7月の主要経済指標は軒並み予想を下回った。7月の鉱工業生産は前年比6.4%増(Bloomberg集計による予想の平均は同7.9%増)、小売売上は同8.5%増(同10.9%増)、1月~7月の固定資産投資は同10.3%増(同11.3%増)であった。これは、①河南省を中心とした1000年に一度といわれる記録的豪雨による洪水・冠水被害、②新型コロナウイルス感染症の変異株感染者の拡大、③エネルギーやコモディティ価格上昇の影響などが想定以上であったことが背景であろう。
◆今後について、明るい材料もある。ひとつは預金準備率の引き下げなど、政策対応余地の大きさである。もうひとつはワクチン接種の加速である。2021年8月18日時点で、中国国内で延べ19億回分のワクチン接種が終了した。中国の2020年末の人口は14億1,178万人であり、人口の8割に2回接種の場合は延べ22.6億回分となる。直近は8日間で1億回分のペースであり、あと1カ月弱で「8割に2回」が達成できる計算である。3回接種の場合でも年内で終了することになる。集団免疫の獲得も近く、そうなれば、接触型消費の本格回復の期待が大きく高まろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
中国:トランプ関税2.0で25年は3.9%成長へ
迂回輸出は当面温存。「トランプ関税2.0」の長期化は想定せず
2025年04月23日
-
中国:米国の対中追加関税率は累計104%→145%、中国経済への悪影響はほぼ変わらず
中国は交渉(ディール)の用意があることを示唆
2025年04月11日
-
中国:米国の104%追加関税、悪影響には天井
累計104%の追加関税で中国の実質GDPを2.84%押し下げ
2025年04月09日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日