サマリー
国家統計局によると、2019年3月の豚肉価格は前年同月比5.1%(以下、変化率は前年同月比)上昇と、26ヵ月ぶりに上昇に転じた。消費者物価上昇率2.3%に対する寄与度は0.12%ptであった。国家統計局は生鮮野菜などいくつかの品目に限定して寄与度に言及するが、豚肉がそれに含まれるのは、価格変動が極めて大きく、物価全体への影響が軽視できないためである。
前回の豚肉価格の高騰局面では、16年5月に33.6%上昇のピークを付け、CPI上昇率2.0%に対する寄与度は0.8%ptとなった。豚肉と飼料の価格比は6(豚肉):1(飼料)が養豚業者の損益分岐点とされ、これを上回るほど利益が増加し、下回るほど赤字が増加する。前回でいえば、14年1月~15年5月に長期にわたり価格比が6;1を下回り、規模を縮小したり、養豚をやめる業者が増加した。このことは繁殖用母豚の飼育頭数の減少として推移に如実に表れる。繁殖用母豚の補充から交配・出産・肥育には12ヵ月程度が必要とされ、供給不足(懸念)が豚肉の価格を押し上げるのである。
今回は、前回以上の豚肉価格の高騰が懸念される。価格比の6:1割れは短期間(18年3月中旬~6月初旬)で収束したが、アフリカ豚コレラの蔓延が養豚業者の飼育意欲を大きく損なっている。アフリカ豚コレラは昨年8月に発生が確認されてから急速に全土に拡大した。19年に入ると繁殖用母豚の飼育頭数は急減し、3月は21.0%減となった。これから来年春にかけて国内の豚肉供給は大きく減少する可能性が高い。中国農業農村部は「豚肉価格は今年後半にはさらに値上がりし、上昇率は70%を超え、過去最高になる」との見通しを示した。これは単月の消費者物価を1.7%pt押し上げる計算となる。消費者物価上昇は実質消費の押し下げ要因となるだけに、今後の動向が注目される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
中国:力不足、あるいは迷走する政策と景気減速
依然不透明なトランプ関税2.0の行方
2025年08月22日
-
中国:年後半減速も2025年は5%前後を達成へ
不動産不況、需要先食い、トランプ関税2.0の行方
2025年07月22日
-
中国:内巻(破滅的競争)と上乗せ関税の行方
追加関税大幅引き下げでも製造業PMIは50割れが続く
2025年06月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
-
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
-
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
-
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日