サマリー
2017年は中国政府が本格的にシャドーバンキング(影の銀行)問題の改善を試みた一年であった。理財商品、レポ取引といったシャドーバンキングやレバレッジ拡大のテコに使われている金融取引に対する規制が相次いで実施(または実施を予告)された。
理財商品とは銀行が販売する金融商品の一つで、個人投資家、他の銀行を含めた金融機関、機関投資家等が購入しており、集められた資金を運用した利益が購入者に分配される。中国政府がシャドーバンキング問題において重視した課題の一つは、銀行等を中心とした金融機関向けに販売される理財商品の残高削減であった。複数の金融機関が投資する金融機関向けの理財商品で元本割れが発生した場合、損失は複数の金融機関にまたがることになる。貸出においても同様のことは起き得るが、理財商品は銀行が自行で与信をしたくない、あるいは政府の方針で与信ができない企業やプロジェクトに資金を融通する手段ともなっているため、通常の貸出よりもリスクが高いとみなされる。
このような認識のもと、2017年4月に中国銀行業監督管理委員会は「銀行業のリスクコントロール業務に関する指導意見」を発表し、金融機関同士での融資・投資に関する監督強化を行った。
では、当局の取り組みはどの程度効果があったのだろうか。2018年2月2日に発表された「中国銀行業理財市場報告」によると、理財商品全体の残高は2016年末の29.1兆元(GDP比39%)から2017年末で29.5兆元へと微増したものの増加ペースは大きく減速した。こうした中、金融機関向け理財商品の残高は大きく減少した。銀行が自己のバランスシート内の資金で保有する分に加え、証券会社、保険会社が保有する理財商品の残高は2017年初時点の6.7兆元(GDP比9%)から2017年末時点では3.3兆元に減少した。
こうしたリスク管理の強化によって、昨年来、市場金利は大きく上昇している。今後、景気の減速が明らかになれば、当局はリスク管理と金利の過度な上昇の抑制という難しい舵取りを迫られることになるだろう。
(※1)本稿は、大和総研コラム『一筋縄にはいかないシャドーバンキング問題-金融機関のリスク抑制に向けた取り組み-』(2018年2月13日)を一部修正して、転載したもの。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
- 
                
                
                
                    
【更新版】中国:100%関税回避も正念場はこれから
具体的な進展は「フェンタニル関税」の10%引き下げにとどまる
2025年11月04日
 - 
                
                
                
                    
中国:100%関税回避も正念場はこれから
具体的進展は「フェンタニル関税」の10%引き下げにとどまる
2025年10月31日
 - 
                
                
                
                    
中国:新5カ年計画の鍵は強国と自立自強
基本方針は現5カ年計画を踏襲、構造問題の改革意欲は低下?
2025年10月24日
 
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
                                
                                    
                                      - 
                                              
                                          
第226回日本経済予測(改訂版)
                                          低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
                                          
                                            2025年09月08日
                                          
                                       
                                      - 
                                              
                                          
聖域なきスタンダード市場改革議論
                                          上場維持基準などの見直しにも言及
                                          
                                            2025年09月22日
                                          
                                       
                                      - 
                                              
                                          
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
                                          金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
                                          
                                            2025年09月01日
                                          
                                       
                                      - 
                                              
                                          
日本経済見通し:2025年9月
                                          トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
                                          
                                            2025年09月25日
                                          
                                       
                                      - 
                                              
                                          
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
                                          25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
                                          
                                            2025年01月23日
                                          
                                       
                                
                        
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日

