サマリー
◆中国の銀行の理財商品は、オフバランスのものでも銀行の暗黙の保証が期待されている可能性が考えられることから、銀行に債権に見合った自己資本を求めるマクロ・プルーデンス・アセスメント(MPA)における広義の債権に、オフバランスの理財商品を含める規制強化が、2017年から実施された。その結果、銀行預金の2割を超える水準まで増加していた銀行の理財商品残高は、2017年から減少に転じた。
◆このことが一要因となって、中国の金融市場全体における資金需給のひっ迫度が高まり、理財商品の利回りのみならず、国債やアリババの電子商取引の決済に利用できる余額宝の利回りが、2017年に入って上昇している。
◆このような中で、金融政策の中で設定される預金基準金利が据え置かれており、銀行預金金利の相対的有利性が低下していることから、銀行預金の増加率が縮小している。そして、中央銀行から銀行への貸出が高止まりしており、銀行の資金を補う形になっている。
◆金融市場における利回りが上昇しているにもかかわらず、中央銀行が、銀行への貸出により銀行の資金を補って、預金基準金利を据え置いているのは、銀行の利鞘の確保による銀行の自己資本の充実を通じて金融危機を防止することを優先しているためと考えられる。
◆その一方で、市場による金利決定というもう一つの政策目標は、後回しにされている。市場による金利決定が十分進んでいないことは、中国が国際的な資本取引を自由化しない理由の一つと考えられ、今後も金融危機の防止を優先して、市場による金利決定という政策目標を後回しにし続けるのかが注目される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
中国:トランプ関税2.0で25年は3.9%成長へ
迂回輸出は当面温存。「トランプ関税2.0」の長期化は想定せず
2025年04月23日
-
中国:米国の対中追加関税率は累計104%→145%、中国経済への悪影響はほぼ変わらず
中国は交渉(ディール)の用意があることを示唆
2025年04月11日
-
中国:米国の104%追加関税、悪影響には天井
累計104%の追加関税で中国の実質GDPを2.84%押し下げ
2025年04月09日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日