中国:党大会の注目点 独り勝ちにはリスクも

党大会後に景気は大きく減速するのか~現地ヒアリングを踏まえて~

RSS

2017年09月14日

サマリー

◆第19回党大会は2017年10月18日に開幕することが正式に発表された。党大会の注目点は、現在7名で構成される政治局常務委員の顔ぶれはどうなるのかである。①習近平総書記の信頼が厚いとはいえ、現在69歳の王岐山・中央規律検査委員会書記の再任の有無が焦点となっているが、再任が5年後に69歳となる習近平総書記の3期目続投の布石となり得ることに対する異論も存在する、②政治局常務委員のほとんどが習近平総書記に近い人物で占められると、政策等が行きすぎないための抑止力が働かず、事後的な修正も難しくなるリスクが高まる、といった見方がある。


◆今後5年間で最も重要な改革について、日本と中国の研究機関や金融機関、企業等にヒアリングしたところ、①国有企業改革、銀行改革、債務問題の改善、②財政改革と社会保障改革、そして③政治改革、という回答が挙げられた。①の国有企業改革、銀行改革、債務問題の改善は着実に進めるべきであるが、大和総研は「拙速」な改革は、むしろ中国経済を混乱に陥れるリスクがあると懸念している。困難な改革はやはり時間をかけて漸進的に実施し、ソフトランディングを図ることが求められる。


◆2017年1月~6月の高成長は、党大会を前にかなり無理をしたテコ入れ策を行った結果であり、党大会後に中国経済はその反動で大きく減速するとの見方がある。しかし、足元でも、いわゆる「政治サイクル」的な固定資産投資の加速は観測されない。景気のリード役は消費である。今後、不動産開発投資の減速などを中心に、固定資産投資は鈍化が予想されるが、消費が引き続き牽引役となり、少なくとも景気の大きな減速は避けられる見通しである。


◆今後の金融政策の見通しについての現地の見方は分かれている。「経済成長の安定化」を重視するのか、それとも「金融リスクの防止」を重視するのか。同時に追求することが望ましいことは言うまでもないが、二者択一を迫られる場合は、「角を矯めて牛を殺す」ごとく成長を犠牲にすることはないであろう。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。