サマリー
◆2017年7月の主要経済統計は軒並み減速した。中国の統計は月毎のぶれが大きく、単月のデータで一喜一憂する必要はないのかもしれないが、①住宅「実需」の抑制、②民間部門の景況悪化、といった懸念材料が出てきていることには注意が必要であろう。中国経済は1月~6月の6.9%成長をピークに、緩やかに減速していく可能性が高い。
◆懸念材料の一つは住宅「実需」の抑制である。国家統計局はティア1都市、ティア2都市の投機・投資需要の減退を政策効果の発現として高く評価しているが、抑制されたのは投機・投資需要に限定されない。例えば、北京市では、居住目的と見做される、家計で1軒目の住宅ローン金利については、市場金利の上昇を受けて、今年6月から多くの銀行が貸出基準金利を上回る金利設定を行うようになっている。本来であればサポートされるべき居住目的の住宅購入を抑制しかねない状況であり、価格抑制策が効きすぎるリスクが懸念されよう。
◆もう一つの懸念材料は民間部門の景況悪化である。国家統計局の製造業PMI(50が拡大と縮小の分岐点)を企業規模別に見ると、2017年7月は大型企業が52.9と2ヵ月連続で上向いた一方で、中型企業は49.6、小型企業は48.9と、それぞれ7ヵ月ぶり、4ヵ月ぶりに50を下回った。金融引き締めやデレバレッジの悪影響は中小企業に色濃く表れているのである。
◆米トランプ大統領は、中国による米国企業の知的財産権の侵害が深刻だとして、通商法301条の適用を視野に米通商代表部(USTR)に対して調査開始を指示し、8月18日に調査が開始された。当然、これはリスク要因ではあるが、調査が終了するまでに相当な期間が必要との指摘があり、直ぐにどうこうという話ではない。むしろ気になるのは、5月中旬以降の元高の影響である。これまで中国の輸出増加をサポートしてきた元安局面は変化しつつあり、先行きには注意が必要となろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
中国経済見通し:不動産不況の底打ちに期待
見通しを2026年4.5%→4.6%、2027年4.2%→4.4%に引き上げ
2026年10月22日
-
中国:26年7~9月は4.5%成長の低空飛行
さらなる景気テコ入れ策の可能性も
2026年10月19日
-
米中貿易戦争、勝者は中国
伝家の宝刀・レアアース、輸出先の分散化、迂回輸出
2026年10月02日
最新のレポート・コラム
-
利用広がる議決権パススルー
投資信託のリテール顧客による議決権行使の選択が現実のものに
2026年10月26日
-
日本版米国型AWMビジネスモデルを創出するための条件
~投資銀行型と商業銀行型の比較~『大和総研調査季報』2026年秋季号(Vol.64)掲載
2026年10月26日
-
次世代の「地域金融の課題と競争のあり方」
~最新データに基づく地域銀行の競争可能性の再試算~『大和総研調査季報』2026年秋季号(Vol.64)掲載
2026年10月26日
-
マル優・NISA等の非課税制度が家計金融資産に及ぼした影響の長期分析
~家計の国債保有優遇策の検討に向けた政策的示唆~『大和総研調査季報』2026年秋季号(Vol.64)掲載
2026年10月26日
-
子どもが幼いうちは子育てに専念したい世帯にも目配りを
2026年10月26日
よく読まれているリサーチレポート
-
国税庁が非上場株式評価の方向性を公表
簿価純資産と収益力で評価する「残余利益方式」に統一の方向
2026年09月08日
-
GPIF経営委員会の8月開催が意味すること
基本ポートフォリオ見直しに向けて第一歩を踏み出したのか
2026年09月01日
-
日米協調介入は円安の是正にどこまで効果を発揮したのか?
更なる介入の合理性は低下。レジーム転換の有無が今後の焦点に
2026年09月14日
-
コーポレートガバナンス・コード改訂の焦点
企業の自律的な判断と実質を伴う説明が問われる
2026年08月27日
-
第230回日本経済予測(改訂版)
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年09月08日
国税庁が非上場株式評価の方向性を公表
簿価純資産と収益力で評価する「残余利益方式」に統一の方向
2026年09月08日
GPIF経営委員会の8月開催が意味すること
基本ポートフォリオ見直しに向けて第一歩を踏み出したのか
2026年09月01日
日米協調介入は円安の是正にどこまで効果を発揮したのか?
更なる介入の合理性は低下。レジーム転換の有無が今後の焦点に
2026年09月14日
コーポレートガバナンス・コード改訂の焦点
企業の自律的な判断と実質を伴う説明が問われる
2026年08月27日
第230回日本経済予測(改訂版)
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年09月08日

