サマリー
◆中国において、良好な資金調達環境を背景に、実体経済だけでなく、非実体経済にも多くの資金が流入してきた。非実体経済への過度な資金流入は、金融・資本市場にショックが発生した際に、金融機関等の脆弱性を高める。そのため、足元、中国当局も「脱実向虚(実体経済から脱し、非実体経済へと向かう)」への警戒心を強めている。
◆このような中、中国銀行業監督管理委員会(以下、銀監会)は、3月末より銀行に対する規制・監督強化を立て続けに打ち出した。銀監会は、銀行によるインターバンク取引の増加が、レバレッジ投資や銀行間の持ち合いなど「脱実向虚」を増進させ、金融リスクを高めたと認識し、銀行に対してインターバンク取引の抑制を要求した。
◆インターバンク取引を通じた銀行の過度なリスクテイクが是正されれば、銀行の健全性を高め、中国全体の金融リスクの低下が期待できる。他方で、銀行がインターバンク取引の縮小に向かった結果、インターバンク市場や、調達した資金の運用先であった債券市場への資金流入が細り、SHIBORや債券利回りの上昇につながっている。今後、中国人民銀行や銀監会がいかに市場とコミュニケーションを図り、「脱実向虚」をソフトランディングさせることができるかが注目されよう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
-
中国経済:2023年の回顧と2024年の見通し
24年の成長率目標は5%か?達成の鍵は民営企業へのサポート強化
2023年12月21日
-
2024年の米国経済見通し
①個人消費の腰折れ、②インフレ率の高止まり、③政治の停滞がリスク
2023年12月21日
-
2024年度税制改正大綱解説
定額減税は経済対策としては疑問だが、インフレ調整策としては有効
2023年12月25日
-
四半期報告書の廃止に関する改正法の成立
四半期報告書が廃止された後の四半期決算短信の内容は?
2023年12月04日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
中国経済:2023年の回顧と2024年の見通し
24年の成長率目標は5%か?達成の鍵は民営企業へのサポート強化
2023年12月21日
2024年の米国経済見通し
①個人消費の腰折れ、②インフレ率の高止まり、③政治の停滞がリスク
2023年12月21日
2024年度税制改正大綱解説
定額減税は経済対策としては疑問だが、インフレ調整策としては有効
2023年12月25日
四半期報告書の廃止に関する改正法の成立
四半期報告書が廃止された後の四半期決算短信の内容は?
2023年12月04日