サマリー
◆中国共産党と国務院(内閣)は2017年4月1日に、河北省保定市の雄安新区の設立を発表した。雄安新区は、鄧小平氏主導の広東省深圳経済特区、江沢民・元総書記主導の上海浦東新区に比肩する、中国の「千年の大計」、「国家の大事」と位置付けられている。
◆中国社会科学院によると、雄安新区は伝統的な製造業を誘致せず、新世代情報技術や無人化技術といったハイテク技術を生かした産業と、それを支える研究機関、大学を誘致するとしている。先端産業や研究機関を誘致し、環境共生型の未来型都市を建設するというコンセプトは、日本で言えば、筑波研究学園都市に近いイメージなのではないか。
◆雄安新区は、世界的大都市に変貌した深圳経済特区や上海浦東新区のような成功が保証されているわけではない。かつてのような地域的な優遇税制は終了しているし、雄安地区に先端産業や研究機関、大学等が集積する誘因は、「習近平総書記が主導する」という部分に多くを依存せざるを得ない。しかし、「党・政府、国有企業主導」と「イノベーション主導のハイテク・先端産業の発展」が両立できるかは疑問である。現在のハイテク産業とイノベーションの中核都市としての深圳経済特区の成功は、政府・国有企業の関与が小さく、自由度の高い民間企業が主導していることが主因の一つであることを考えると、インフラ整備一巡後の雄安新区の成功は相当なチャレンジだと思えるのだが、どうであろうか?
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
中国:力不足、あるいは迷走する政策と景気減速
依然不透明なトランプ関税2.0の行方
2025年08月22日
-
中国:年後半減速も2025年は5%前後を達成へ
不動産不況、需要先食い、トランプ関税2.0の行方
2025年07月22日
-
中国:内巻(破滅的競争)と上乗せ関税の行方
追加関税大幅引き下げでも製造業PMIは50割れが続く
2025年06月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日