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中国当局の覚悟を北京の空に問う

今月の視点

2016年06月27日

ニューヨークリサーチセンター 研究員(NY駐在) 矢作 大祐

サマリー

5月の連休中に、中国・北京市を訪問する機会があった。気温は30度前後まで上昇し、夏のような暑さであったものの、例年とは異なる爽やかさを感じた。


なぜ爽やかさを感じることができたのであろうか?それは、心が晴れやかになるほど青空が広がっていたからである。今回北京に滞在した5日間のうち、3日間は青空となった。一般的に、北京の天気はPM2.5に代表されるような大気中の汚染物質の飛散によって、「もや」となることが多い。大気中の汚染物質の飛散状況は通常冬にかけて最も悪化するが、一年中「もや」を体感することは可能である。中でも気温が高い中での「もや」は、体にまとわりつくような感覚であるから、それが解消されただけでも不快感は軽減される。


では、なぜ「もや」が減ったのだろうか?答えは、中国当局が大気汚染対策に積極的に取り組みつつあるからだ。例えば、2013年に当局が公表した「大気汚染防止行動計画」に基づき、2014年には各省・市・自治区が石炭燃焼ボイラーの停止や自動車保有台数の増加速度の抑制等に関する目標値を含めた「大気汚染防止目標責任書」を環境保護部に提出した。実際に、地方政府は目標値を達成するために工場の稼働停止や車のナンバーを基準とした車両規制などを実施している。また、2016年1月からは改正大気汚染防止法が施行され、大気汚染を発生させた企業への罰則も強化されている。


このような中国当局の取り組みの結果は、数値として表れている。在中国米国大使館が公表している空気「Air Quality Index(大気汚染指数)」のデータに基づけば、2015年1月~5月の平均値は152と中程度汚染(健康に良くない)であったが、2016年1月~5月の平均値は136と軽程度汚染(敏感なグループにとっては健康に良くない)と大気汚染の状態は若干良化した。本年3月に全国人民代表大会で採択された第13次5カ年計画においても、汚染物質排出量の一層の削減を求める数値目標が盛り込まれていることから、今後も中国当局の大気汚染対策は継続するものと考えられる。


しかし、昨年11月~12月に大気汚染が極度に悪化したように、今後も冬季にかけて大気汚染が再度悪化する可能性も十分に考えられる。特に、経済成長速度が鈍化している中国にとって、工場の稼働停止や車両規制といった大気汚染対策は短期的には景気に悪影響を及ぼしかねない。実際に、中国当局は景気のテコ入れのために、2015年10月以降排気量1.6リットル以下の乗用車の車両購入税を引き下げた結果、乗用車販売台数が増加した。もちろん排気量の低い車の方が一般的には環境に優しいとはいえるが、車の絶対数が大きく増加すれば元も子もない。言い換えれば、中国当局は大気汚染対策と短期的な経済成長との間のバランスをいかに取るか、という難題に直面している。果たして中国当局は大気汚染対策を継続し、青空を維持することができるのだろうか。北京の空に注目したい。


(※)本稿は、大和総研コラム『中国当局の覚悟を北京の空に問う』(2016年6月13日)を一部修正のうえ、転載したもの。

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