サマリー
◆中国共産党・政府は、今後の中国経済はL字型をたどるとしている。L字とは縦棒(下向き)と横棒(水平)の組み合わせであるが、少なくとも中期的に縦棒がまだ続くと認識されている。
◆当然、長期的なダウントレンドのなかにも短期循環的な景気底打ちや成長率の加速はあり得る。住宅販売好調が牽引した不動産開発投資の底打ち・反転、さらには、高水準の伸びを維持してきたインフラ投資の一段の加速などで、その期待が高まった。
◆しかし、その一方で、大都市を中心とした住宅価格高騰や、固定資産投資における「国進民退」(政策の恩恵が国有部門に集中し、民間部門は蚊帳の外に置かれる)の鮮明化などの問題が生じている。なかでも「国進民退」を資金面で支えたのが銀行貸出と、2014年~2015年は抑制されていたシャドーバンキングの急増であった。緩和に振れすぎてしまった金融政策を本来の「中立」に戻す動きが始まり、既に金融統計にそれが表れている。
◆絶好調だった住宅販売には、ピークアウトの兆しが見え始めている。住宅販売⇒住宅価格⇒不動産開発投資への波及の時間差を勘案すると、当面は不動産開発投資の増加が期待されるが、その天井は低いと認識しておくべきであろう。
◆消費はやや減速している。豚肉を中心に食品価格の上昇ピッチが速まったことが、実質小売売上減速の大きな要因の一つである。今後、豚肉価格上昇率がピークアウトしていくと想定されるのはプラス材料であるが、原油価格等の上昇によって輸入物価が上昇に転じるのはマイナス材料である。総じていえば、消費は底堅い推移は期待できるが、景気を底入れ・反転させていくには力不足であろう。
◆投資にせよ、消費にせよ、明確な牽引役が不足しており、当面、中国の景気は緩やかな減速が続くことになろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
中国:トランプ関税2.0で25年は3.9%成長へ
迂回輸出は当面温存。「トランプ関税2.0」の長期化は想定せず
2025年04月23日
-
中国:米国の対中追加関税率は累計104%→145%、中国経済への悪影響はほぼ変わらず
中国は交渉(ディール)の用意があることを示唆
2025年04月11日
-
中国:米国の104%追加関税、悪影響には天井
累計104%の追加関税で中国の実質GDPを2.84%押し下げ
2025年04月09日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日