金融収支からみる中国の海外資金調達動向

海外からの短期借入依存、ドル建て債の増加といった傾向が顕著

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2015年12月08日

サマリー

◆これまで中国の国際収支は経常収支黒字と金融収支(外貨準備の変動除く)黒字という双子の黒字の状態が続いてきたが、2014年第2四半期以降、金融収支赤字が恒常化している。中国企業の対外投資の拡大も赤字恒常化の要因の一つだが、対内投資(中国の海外からの資金調達)にも変化が起きている。


◆対内投資の変化として、第一に、海外金融機関等からの貸出の減少が著しい。中国向け貸出は短期のものが多く、満期が到来した貸出がロールオーバーされずに流出したものと考えられる。対内債券投資も減少している。他方で、中国企業等が海外で発行する国際債券は増加している。近年は、オフショア人民元債の発行が注目されるが、実際には中国籍企業がSPVを設立し、大量のドル建て債券を発行している傾向が見受けられる。また、新規投資や増資は堅調なものの、外資企業の事業清算に伴う資金流出や、対内再投資収益といった投資先の中国現地企業の資本減少を背景に、対内直接投資も減少している。


◆以上を概括すれば、足元の中国の海外資金調達の構造は、中国向け短期貸出が主因となり、今後も資金流出が発生しやすい構造といえる。また、対内再投資収益等が今後も低水準で推移する可能性もある。結果、資金不足の穴埋めをするため、国際債券の発行増加や、国内銀行貸出への依存を強める可能性も考えられる。中国の民間企業の対外純資産はマイナス(負債超過)となっていることもあり、国際金融市場でのドル供給が減少すれば、資金調達に困難が生じうる脆弱性を抱えていると言えよう。


◆そのため、今後は上記のような海外からの資金調達構造が有するリスクをいかに軽減していくかが課題となろう。例えば、中国当局が、比較的長期の資金である対内直接投資を増やすために、自由貿易試験区でのネガティブリストの項目縮小や、投資の際の事務手続きの簡便化を全国レベルで適用するといった対応を継続できるかが試されよう。

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