サマリー
2015年7月の消費者物価上昇率は前年同月比1.6%にとどまるなど、中国の物価は抑制されている。しかし、気になる動きがある。豚肉価格が急速に上昇しているのだ。2014年1月以降前年同月比で下落していた豚肉価格は、2015年3月に上昇に転じ、7月には同16.7%の上昇となった。豚肉の消費者物価構成ウエイトは3%程度であるが、侮ってはいけない。前回の豚肉価格高騰局面のピークである2011年7月には、豚肉価格は同56.7%の上昇を記録。同6.5%上昇となった消費者物価全体を1.5%ポイント押し上げたのである。
今回の豚肉価格高騰は、これからが本番である。今後、国内の豚肉供給不足は激化していく。2013年に5,000万頭前後で推移していた繁殖用母豚の飼育頭数は、2014年以降減少し、2015年7月には3,877万頭となった。国家発展改革委員会によれば、豚肉と飼料の価格比は、6(豚肉):1(飼料)が養豚業者の損益分岐点であり、これを上回るほど利益が増加し、下回るほど赤字が増加するとされる。2014年1月から2015年5月にかけては価格比が6を下回り、養豚業者は赤字経営を余儀なくされ、将来を悲観して養豚をやめてしまう業者が増加したのだろう。その後、豚肉価格の急上昇に伴い、直近の価格比は7.5と大きく上昇しているが、繁殖用母豚の飼育頭数が増加するには至っていない。繁殖用母豚の補充から交配・出産・肥育(豚肉の供給増加)には12ヵ月程度が必要とされることから、少なくとも今後1年は供給不足が強く懸念されよう。
もちろん、消費者物価上昇の要因は豚肉価格だけではない。2007年中頃から2008年秋、2010年から2011年中頃の過去2回のインフレ加速期にも豚肉価格は高騰したが、この時期は資源価格高騰に伴い輸入物価が急上昇した時期と重なる。今回は、原油価格下落などにより輸入物価が大きく下落していることが、過去2回とは大きく異なっている。
このため、今回は過去2回のような大きな物価上振れは想定していない。ただし、実質消費を損なうインフレ加速には早い段階で対応した方が良いのは言うまでもない(※1)。冷凍豚肉の国家備蓄の放出や輸入増加をはじめ、今後の政策対応に注目したい。
(※1)前回は2011年7月に国務院弁公庁が、①中央政府が大型養豚事業に対して25億元の投資を行う、②養豚奨励重点エリアを421から500に拡大する、③繁殖用母豚一頭につき100元の補助金を支給する、といった豚肉の供給増加を目的とした通知を発表した。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
中国:今後10年の長期経済見通し
第15次5カ年計画の基本方針、山積する構造問題に処方箋を出せず
2026年01月21日
-
中国経済:2025年の回顧と2026年の見通し(更新版)
不動産不況の継続と消費財補助金政策の反動で景気減速へ
2026年01月19日
-
中国が軍民両用品の対日輸出規制を強化
レアアースの対日禁輸措置の可能性
2026年01月07日
最新のレポート・コラム
-
AIの社会実装と加速するインフラ投資
2025年のAI動向と2026年の展望
2026年01月28日
-
直近のMBOによる株式非公開化トレンド
事例比較による公正性担保措置の実務ポイント
2026年01月27日
-
大和のセキュリティトークンナビ 第3回 不動産セキュリティトークンとは?(後半)
不動産セキュリティトークンの発行・流通動向、税制
2026年01月26日
-
大和のクリプトナビ No.6 暗号資産制度WG報告と今後の注目点
業界再編や自主規制機関の体制整備、オンラインでの適合性確保に向けた議論が注目点か
2026年01月26日
-
誰かの幸せが時々つらい。Z世代とみるSNSの変遷
2026年01月28日
よく読まれているリサーチレポート
-
中国によるレアアース・レアメタルの輸出規制は日本の実質GDPを1.3~3.2%下押し
供給制約により、自動車産業を中心に生産活動の低迷が懸念される
2025年12月05日
-
2026年の日本経済見通し
1%弱のプラス成長を見込むも外需下振れや円急落、金利高等に注意
2025年12月23日
-
生成AIが描く日本の職業の明暗とその対応策
~AIと職業情報を活用した独自のビッグデータ分析~『大和総研調査季報』2024年春季号(Vol.54)掲載
2024年04月25日
-
中国経済:2025年の回顧と2026年の見通し
不動産不況の継続と消費財購入補助金政策の反動で景気減速へ
2025年12月23日
-
高市政権の財政政策は更なる円安を招くのか
財政支出の拡大ショックは翌年の円安に繋がる
2025年12月18日
中国によるレアアース・レアメタルの輸出規制は日本の実質GDPを1.3~3.2%下押し
供給制約により、自動車産業を中心に生産活動の低迷が懸念される
2025年12月05日
2026年の日本経済見通し
1%弱のプラス成長を見込むも外需下振れや円急落、金利高等に注意
2025年12月23日
生成AIが描く日本の職業の明暗とその対応策
~AIと職業情報を活用した独自のビッグデータ分析~『大和総研調査季報』2024年春季号(Vol.54)掲載
2024年04月25日
中国経済:2025年の回顧と2026年の見通し
不動産不況の継続と消費財購入補助金政策の反動で景気減速へ
2025年12月23日
高市政権の財政政策は更なる円安を招くのか
財政支出の拡大ショックは翌年の円安に繋がる
2025年12月18日

