サマリー
◆国家統計局によると、2015年4月~6月の実質GDP成長率は前年同期比7.0%と、事前予想を上回った。1月~6月の産業別GDP成長率は、金融業が同17.4%成長と突出している。6月12日までのバブル的な株価急騰とその後の急落に伴う未曾有の売買急増が金融業(証券業)の成長率を押し上げた可能性が高い。
◆今後、中国経済のダウンサイド・リスクは低下していこう。2014年11月以降の本格的な金融緩和の効果発現が期待されることに加え、中国政府が景気下支えを目的に、鉄道、水利、環境、保障性住宅といったインフラ投資や民生改善のための投資をさらに増強しようとしていることがある。さらに、住宅ローン金利の低下や、2015年3月末の短期での住宅売買や二重ローンを容認する住宅市場テコ入れ策が住宅購入意欲を刺激したことで、住宅販売が急回復している。住宅販売と不動産開発投資のタイムラグは6ヵ月~9ヵ月程度であり、不動産開発投資は、早ければ7月~9月にも底打ちして、その後は回復していく可能性が高い。
◆ただし、インフラ投資や民生改善のための投資をさらに増強する場合、その多くは中国政府との関係が密接な銀行からの貸出増加に頼らざるを得ない。不動産開発投資については、住宅在庫の調整が一段落した大都市で投資が増加するのはよいが、そうではない地方都市でも同様の動きが出れば要注意であろう。さらなる在庫調整の長期化や貸出の不良債権化が懸念されるためである。
◆結局のところ、今後の景気の底打ち・回復は、投資・投機を容認した住宅市場の回復やインフラ投資増強などと、それを金融面で支える銀行貸出の増加という伝統的な方法によるものである。ただし、やりすぎは禁物であろう。やりすぎれば、効率の低い投資と無駄な借金(不良債権)の増加という、やはり中国が抱える伝統的な問題の先鋭化を招き、将来に禍根を残すだけである。そうならないための将来的な「出口」戦略を含め、細やかな政策対応が求められている。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
2024年12月日銀短観予想
中国の景気減速で製造業の業況判断DI(最近)が下振れか
2024年12月11日
-
政策保有株式の保有と縮減の状況
銘柄数は縮減傾向も保有額は増加の傾向
2024年12月11日
-
2024年度の自社株買いが大幅増となった背景と株価への影響
損保の政策保有株式売却が一因。自社株買いが株価の下支え効果も
2024年12月10日
-
第223回日本経済予測(改訂版)
日米新政権誕生で不確実性高まる日本経済の行方①地方創生の効果と課題、②「地域」視点の少子化対策、を検証
2024年12月09日
-
インフレによって債務残高対GDP比を低下させ続けることは可能か?
2024年12月11日
よく読まれているリサーチレポート
-
学生の「103万円の壁」撤廃による就業調整解消は実現可能で経済効果も大きい
学生61万人の就業調整解消で個人消費は最大0.3兆円増の可能性
2024年11月11日
-
課税最低限「103万円の壁」引上げによる家計と財政への影響試算
基礎控除を75万円引上げると約7.3兆円の減税
2024年11月05日
-
課税最低限「103万円の壁」引上げによる家計と財政への影響試算(第2版)
「基礎控除引上げ+給与所得控除上限引下げ案」を検証
2024年11月08日
-
石破政権の看板政策「2020年代に最低賃金1500円」は達成可能?
極めて達成困難な目標で、地方経済や中小企業に過重な負担の恐れ
2024年10月17日
-
トランプ2.0で激変する米国ESG投資政策
年金制度におけるESG投資の禁止、ESG関連開示制度の撤廃など
2024年11月07日
学生の「103万円の壁」撤廃による就業調整解消は実現可能で経済効果も大きい
学生61万人の就業調整解消で個人消費は最大0.3兆円増の可能性
2024年11月11日
課税最低限「103万円の壁」引上げによる家計と財政への影響試算
基礎控除を75万円引上げると約7.3兆円の減税
2024年11月05日
課税最低限「103万円の壁」引上げによる家計と財政への影響試算(第2版)
「基礎控除引上げ+給与所得控除上限引下げ案」を検証
2024年11月08日
石破政権の看板政策「2020年代に最低賃金1500円」は達成可能?
極めて達成困難な目標で、地方経済や中小企業に過重な負担の恐れ
2024年10月17日
トランプ2.0で激変する米国ESG投資政策
年金制度におけるESG投資の禁止、ESG関連開示制度の撤廃など
2024年11月07日