サマリー
◆ニューノーマル(新常態)には、経済構造の高度化や質的向上を内包する、前向きなニュアンスが込められているが、その痛みが、一部地方に集中して発現していることも事実である。2014年の実質経済成長率は、中国全体の前年比7.4%に対して、山西省は同4.9%、黒竜江省は同5.6%、遼寧省は同5.8%にとどまった。これらは石炭など資源や鉄鋼・セメントなど重工業を中心とする地方であり、内需減速による需要低迷や過剰生産設備を抱える重工業分野の新規投資の落ち込みなどが、鉱工業生産の低迷や固定資産投資の大幅減速をもたらした。遼寧省に至っては、2014年の固定資産投資は同1.5%のマイナスに落ち込んだ。
◆2014年の実質成長率の実績と2015年の目標を比較すると、19地方が2015年の目標を低くし、3地方が同じ、9地方が実績より高い目標設定となっている。2015年の成長鈍化を想定する地方は、①製造業投資は質の高いものを厳選する一方、産業構造高度化に寄与する戦略的新興産業向け投資などを促進するというメリハリを付けつつ、固定資産投資の全体の伸びは抑制する、②伝統的サービス産業に加え、ハイテク関連サービス(情報、研究開発)など現代サービス産業をリード役とする、との方針を掲げたところが多い。
◆2015年の目標を2014年の実績よりも高く設定した地方は、経済発展段階が低いためにやや高めの成長率を維持したい西部のいくつかの省と、2014年の成長率が大幅に低下した資源・重工業大省に二分される。難しいのは、中国全体として固定資産投資の減速が想定されるなか、後者を如何にして下支えするかであろう。大和総研は、3月5日から開催される全人代で、景気失速リスクを抱える資源・重工業大省への政策対応、特に財政政策でどのような方針が打ち出されるかに注目している。2015年は財政赤字と地方債発行のある程度の拡大が想定され、財政支出の向け先や地方債発行の配分における資源・重工業大省へのサポートが注目される。さらに、一部地方政府の財政収入の伸び鈍化が想定されるなか、中央政府からの財政移転の重要度が増していることは言うまでもない。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
米GDP 前期比年率+2.8%と加速
2024年4-6月期米GDP:内需主導での堅調さを維持
2024年07月26日
-
監査・ガバナンス強化へ回帰する英国
昨年撤回した監査強化方針を復活し、ガバナンス・コードも厳格化へ
2024年07月25日
-
女性がキャリアを築ける職場ほど、子どもを持ちやすい
健保組合ごとの被保険者・被扶養者の出生率と、その要因の多変量解析
2024年07月24日
-
GX経済移行債に期待されるインパクトレポーティング
~GXの理解醸成促進に向けて~『大和総研調査季報』2024年夏季号(Vol.55)掲載
2024年07月24日
-
盛り上がりに欠ける英国の政権交代
2024年07月26日
よく読まれているリサーチレポート
-
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
-
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
-
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日