中国:成長率低下は当たり前

2014年は7.4%成長。安定した雇用の維持のため景気下支え策を継続

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2015年01月21日

サマリー

◆国家統計局によると、2014年の中国の実質GDP成長率は前年比7.4%と、2012年、2013年の同7.7%から減速した。一般には低成長への懸念が強調されるが、中国の産業構造はサービス化が進展しつつあること(高成長期から安定成長期へ移行)などから、成長率が徐々に低下していくのは自然である。


◆2015年の消費のポイントは、家具・家電、居住目的の場合の自動車など広い裾野を持つ住宅市場、それに自動車販売の行方である。懸案の住宅市場には底入れの兆しがみえる。一方で、やや懸念されるのは、自動車販売の動向である。すさまじい交通渋滞や大気汚染への対応策として、自動車購入制限を導入する都市が増えており、こうした動きは今後さらに広がりかねない。


◆2015年の固定資産投資は、緩やかに減速しよう。設備過剰感が大きい鉄鋼やセメントなど重化学工業分野の投資抑制は、政策効果発現の面がある。今後も想定されるのは、分野を絞った下支え的なものであり、投資全体を浮揚させる本格的な景気「刺激策」が実施される可能性は極めて低い。


◆社会資金調達金額は、2014年7月以降続いた前年割れから12月には同34.9%増と大幅なプラスに転じた。それでは、中国人民銀行の思惑通りに、中小・零細企業の資金調達難は緩和しているのであろうか?少なくとも現段階の答えは、否である。企業別製造業PMIの推移をみると、12月の小型企業の製造業PMIは45.5と、拡大と縮小の分岐点である50を大きく下回り、統計の取れる2012年2月以降では2012年5月(45.2)以来2番目に低い水準に落ち込んでいる。経済政策運営上、中国政府が最も重視する安定した雇用の維持には、中小・零細企業対策が不可欠であり、再利下げなどを含む景気下支え策が続くとみている。


◆総じてみれば、緩やかな景気減速が続く可能性が高く、大和総研では、2015年の実質GDP成長率を7.0%(2016年は6.8%)程度と想定している。

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