サマリー
◆2014年8月の鉱工業生産は前年同月比6.9%増と7月の同9.0%増から大きく減速し、リーマン・ショック後の2009年1月~2月の同3.8%増以来の低水準となるなど、中国経済は減速傾向を強めている。
◆国家統計局は、それでも「一部経済指標は伸びが鈍化したものの、経済全般は安定のなかにも好転や質的向上が見られる」とし、強気の姿勢を崩していない。雇用はしっかりとし、第二次産業全体の生産や投資が減速するなかでも付加価値の高い個別産業の伸びは全体を上回り、第三次産業は比較的堅調であることがその背景である。
◆人力資源社会保障部の四半期データによると2014年6月末の求人倍率は1.11倍であり、上昇傾向のなか高水準を維持している。供給サイドでは、2012年以降、生産年齢人口が減少していることも高水準の求人倍率に影響している可能性はあるが、それでも都市部新規雇用増加数が1月~8月で970万人余りと、年間の政府目標1,000万人を大幅に超過達成する勢いなのは、雇用自体が堅調であることを示唆している。景気減速と雇用の堅調が両立するのは、中国経済のサービス化が進展していることが大きな要因のひとつであろう。
◆短期的な中国経済見通しについて、大和総研は、7.5%成長を達成するための景気下支え策が続くとみている。これがメイン・シナリオである。しかし、徐才厚氏(軍)、周永康氏(石油閥)の摘発により、習近平総書記の権力基盤は強固になり、2013年11月の「三中全会」で打ち出された積極的な改革路線に回帰する可能性も高まりつつある。端的にいえば、債務の急膨張を抑制して構造改革をより重視し、ある程度の成長率の下振れを容認するのである。7.5%前後という政府目標が、既得権益層への妥協の産物であれば、早晩、無理をした高めの経済成長路線が修正される可能性が高い。「まだ決められない政治」から「決められる政治」への脱却であり、早ければ1~2ヵ月で、遅くても2015年3月の全人代でそれが明らかになるのではないか。
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