サマリー
◆5月のHSBCの製造業PMIは49.4と、5ヵ月連続して拡大と縮小の分岐点である50を下回ったとはいえ、4月の48.1からは大きく改善。5月の国家統計局の製造業PMIは50.8と、こちらは2月の50.2をボトムに改善傾向にある。これは4月以降、当局が矢継ぎ早に発表した景気下支え策によってセンチメントが改善したためであろう。
◆しかし、景気下支え策のメニューは豊富だが、実際の景気押し上げ効果が期待できるのは、鉄道投資の増額修正くらいであろう。6月16日には一部金融機関限定で預金準備率引き下げを実施したが、凍結が解除される資金は1,000億元程度であり、2013年の人民元貸出増加額8兆8,917億元の1.1%にすぎない。金融「緩和」効果を期待するにはあまりに小さい。諸政策の目的はあくまでも景気「下支え」であり、景気を持続的に回復させていくようなものではない。今後も景気が大きく下振れない限り、小出しの景気「下支え」策で乗り切るつもりなのだろう。
◆「偽輸出」の影響が一巡し、5月の輸出は前年同月比7.0%増と、1月~4月の前年同期比2.3%減から大きく改善した。今後について、2つのポイントを指摘したい。1つは輸出堅調が景気の下支えとなる可能性である。中国の輸出に3ヵ月~4ヵ月程度の先行性がある先進国・地域の景況感は高い水準で推移しており、少なくとも秋口までの輸出堅調を示唆している。もう1つは当局が元高誘導を再開する可能性である。輸出統計が悪化するなかでの元安誘導は、2005年7月以降の持続的な元高で価格競争力低下に苦しむ輸出企業への配慮ではある。しかし、「偽輸出」の影響が一巡すれば輸出統計が正常化し、対外的にも元安誘導の言い訳は苦しくなるのは明白である。今後は、持続的元高をテコに、輸出製品と産業構造の高度化を進めるという、従来の方針に回帰する可能性が高いとみている。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
中国:力不足、あるいは迷走する政策と景気減速
依然不透明なトランプ関税2.0の行方
2025年08月22日
-
中国:年後半減速も2025年は5%前後を達成へ
不動産不況、需要先食い、トランプ関税2.0の行方
2025年07月22日
-
中国:内巻(破滅的競争)と上乗せ関税の行方
追加関税大幅引き下げでも製造業PMIは50割れが続く
2025年06月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日