サマリー
◆中国の住宅販売に急ブレーキがかかっている。2014年1月~5月の住宅販売金額は前年同期比10.2%減と2013年の前年比26.6%増から一転して減少した。住宅販売面積・金額は、住宅価格に3ヵ月~9ヵ月程度先行する傾向があり、今後、住宅価格がさらに調整することを示唆している。不動産投資の減速や住宅販売の不振は当然のことながら景気の下押し要因である。
◆ここもとの住宅販売の不振は、①そもそも大都市の一般世帯にとって住宅が高嶺の花となるなか、1軒目の住宅ローンまでも規制が強化されてしまったこと、②4兆元の景気対策の後遺症で、一部地方都市の住宅在庫が消化不能なほどに膨れ上がってしまったこと、③さらには習近平総書記が主導する綱紀粛正の影響が特に高級物件で色濃く出ていること、などの要因が複雑に絡み合っている。
◆住宅価格が短期的に下落することは想定内としても、中国経済の持続的安定成長、地方政府の財政収入確保と債務返済の要請から、それが長期化するのは避けなければならない。手っ取り早いのは、2009年12月以降の「価格抑制策」と正反対の政策を打ち出すことであるが、それは、投資・投機目的の住宅所有を奨励することに他ならず、住宅市場の健全化とは相容れない政策となってしまう。
◆中期的には、地方政府の安定税収確保のための税制改革が不可欠である。例えば、不動産のストックに広く浅く課税する固定資産税を導入し、これを地方政府の安定財源とする。土地使用権譲渡収入は中央の財源とし、地方政府が財政収入確保や債務返済の必要から土地使用権を高値で譲渡しなければならない、というインセンティブを一旦は断ち切るのである。中央の財源となった土地使用権譲渡収入は、地方への財政移転や保障性住宅の建設などに使われるべきである。世帯年収の4~5倍で購入可能な保障性住宅は、最も実需が大きいセグメントであり、これをしっかりと供給することで社会不満も和らごう。供給構造が実需中心に変われば、息の長い住宅ブームの到来も期待できるようになる。中国政府は、今後3年間で不動産統一登記制度を確立するとしているが、これは本格的な固定遺産税導入の準備の可能性が高く、今後の動向が注目される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
中国:堅調スタートも持続性には疑問符
不動産不況、需要先食いのツケ、中東情勢緊迫化
2026年03月24日
-
中国:第15次5カ年計画を読み解く
成長率目標は設定されず。数値目標は安全保障の優先度上昇を示唆
2026年03月16日
-
中国:成長率目標引き下げも達成は困難か
さらに強化した積極的財政政策は有名無実化
2026年03月06日
最新のレポート・コラム
-
日本は国際的な人材獲得競争で勝てるのか
外国人労働者の増加継続を見込むも経済下振れと円安がリスク要因
2026年04月07日
-
2026年2月消費統計
財は弱いもののサービスが強く、総じて見れば前月から小幅に増加
2026年04月07日
-
原油高・リスクオフ下での新興国の耐性は
脆弱性が最も懸念されるのは南ア。耐性が高いのはブラジル
2026年04月06日
-
トランプ大統領「米国政府と契約したければDEIをやめなさい」
大統領令を発出し、米国政府の契約先企業によるDEIへの取り組みを精査・規制する方針を明示
2026年04月06日
-
「第3次オイルショック」発生リスクへの日本の対応は十分か
2026年04月08日
よく読まれているリサーチレポート
-
米国:AIブームの裏側で高まる金融リスク
ITセクターの収益懸念が揺らすプライベート・クレジット市場
2026年03月13日
-
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
-
中東情勢緊迫化が日本経済の下振れリスクに
原油価格100ドル/バレルで26年度の実質GDP成長率は▲0.2%pt
2026年03月02日
-
ガバナンス・コード改訂による取締役会等機能強化
取締役事務局の役割を列挙、保有現預金の検証、「コーポレートセクレタリー」への言及など
2026年03月11日
-
「SaaSの死」は何を意味するのか?
AIエージェントが促すSaaS業界の構造変化、経済社会・雇用への波及
2026年03月03日
米国:AIブームの裏側で高まる金融リスク
ITセクターの収益懸念が揺らすプライベート・クレジット市場
2026年03月13日
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
中東情勢緊迫化が日本経済の下振れリスクに
原油価格100ドル/バレルで26年度の実質GDP成長率は▲0.2%pt
2026年03月02日
ガバナンス・コード改訂による取締役会等機能強化
取締役事務局の役割を列挙、保有現預金の検証、「コーポレートセクレタリー」への言及など
2026年03月11日
「SaaSの死」は何を意味するのか?
AIエージェントが促すSaaS業界の構造変化、経済社会・雇用への波及
2026年03月03日

