サマリー
5月上旬に当社役員の中国広東省訪問に同行する機会を得た。広東省社会科学院では、珠江デルタを中心とした世界屈指の大都市圏構想や、東南アジアとの関係を重視した「21世紀の海上シルクロード」構想に関する説明を受け、中核を担う広東省の重要性を再認識した。香港の後背地として「特区中の特区」と評される深圳市前海深港現代サービス業合作区では、商機を逃すまいとする人々の熱気が充満していた。
深圳証券取引所では、宋麗萍CEOがランチョンミーティングに続いて真新しい取引所ビルを自ら案内するという「熱烈歓迎」ぶりであった。宋CEOは2012年11月の中国共産党第18回党大会後に中央委員会候補委員に選出された金融界の重鎮で、10分の面談さえ難しいとされる人物である。その人物が2時間もの時間を割く異例ともいえる歓待であった。
4月下旬以降、中国の対日政策は、経済交流は積極的に活発化させ、さらに政治面でもトップ外交以外は推進する方針に転じたとの観測がある。5月には高村正彦・自由民主党副総裁率いる日中友好議員連盟議員団が、党内序列3位の張徳江・全人代常務委員長(国会議長)と、野田毅元自治相を会長とする自民党アジア・アフリカ問題研究会訪中団が、同4位の兪正声・全国政治協商会議主席と会談したことがその証左である。今回の宋CEOの対応からこうした動きを肌で感じたというのは言いすぎであろうか?
もうひとつ感じたのは習近平総書記が主導する綱紀粛正の徹底ぶりである。香港の老舗レストランの深圳支店で食事をした際には、20テーブル中3テーブルしか埋まらず、高級食材が特色のはずが、一人約3,000円のオーダーブッフェが目玉とされていた。
別の筋からは、広州市の共産党組織や政府機関に属する人々に対して、住宅を何軒所有しているかなどに関する自己申告制度が導入され、その締め切りが間近に迫り、多くの人が頭を抱えているとの話を聞いた。正直に複数と答えれば、その出所が問われるし、虚偽報告が暴かれれば免職の憂き目にあう。こうした人々の不動産購入意欲は大きく低下しているはずである。この自己申告は広州市に限った話ではあるまい。
全国商業不動産販売金額は2013年の前年比26.3%増から2014年1月~4月は一転して前年同期比7.8%減となった。要因の一つは綱紀粛正強化による様子見である可能性があろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
中国:内巻(破滅的競争)と上乗せ関税の行方
追加関税大幅引き下げでも製造業PMIは50割れが続く
2025年06月24日
-
中国:関税引き下げを受け、見通しを上方修正
25年は3.9%→4.8%、26年は4.0%→4.2%に上方修正
2025年05月23日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日