サマリー
◆2014年4月、もしくは1月~4月の統計は、内需が低空飛行を続けていることを示している。こうしたなか、中国政府は大掛かりな景気刺激策ではなく、的を絞った景気下支え策を実施し始めている。旧鉄道部から分離独立した中国鉄路総公司の2014年の当初投資計画は6,300億元であったが、その後7,000億元⇒7,200億元⇒8,000億元へと増額修正された。計画通りであれば、2014年の鉄道投資は前年比22.8%増となる計算であり、2014年1月~4月の前年同期比8.6%増からの大幅加速が意図されている。最大の難所は資金調達であり、4月2日の国務院常務会議で示された鉄道発展基金の早期設立と稼働が不可欠であろう。
◆不動産(住宅)市場のテコ入れについて、中国人民銀行は、5月13日に商業銀行に対して、家計の1軒目の一般住宅購入の際の住宅ローン審査を迅速に行い、優先的に供与する旨の窓口指導を行った。少なくとも実需のテコ入れは始まろうとしている。景気下支え策ならびに民生改善のための保障性住宅の建設加速と合わせて、今後の動向に注目したい。
◆ただし、足元の政策が、鉄道投資計画の増額修正や1軒目の住宅ローンの優先貸出といった微調整で済んでいるのは、景気が大きく下振れしていないためである。例えば、今後、固定資産投資が急低下するようなことがあれば、より本格的な景気刺激策発動の可能性は否定できない。
◆結局のところ、当面の頼みの綱は先進国景気改善に伴う輸出増加である。「偽輸出」とみられる水増しの影響が一巡する5月以降の輸出は、データとしても改善していくとみられる。内需は力強さに欠けるが、年後半は純輸出が久しぶりに(水増しのせいではなく)成長に対してプラスの寄与となることで、通年では7.5%程度の成長を確保する可能性が高まろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
中国経済見通し:内需不振で強まる減速傾向
2026年は自動車販売台数も急減速(あるいは減少)か
2025年09月24日
-
中国:力不足、あるいは迷走する政策と景気減速
依然不透明なトランプ関税2.0の行方
2025年08月22日
-
中国:年後半減速も2025年は5%前後を達成へ
不動産不況、需要先食い、トランプ関税2.0の行方
2025年07月22日
最新のレポート・コラム
-
働く低所得者の負担を軽減する「社会保険料還付付き税額控除」の提案
追加財政負担なしで課税最低限(年収の壁)178万円達成も可能
2025年10月10日
-
ゼロクリックで完結する情報検索
AI検索サービスがもたらす情報発信戦略と収益モデルの新たな課題
2025年10月10日
-
「インパクトを考慮した投資」は「インパクト投資」か?
両者は別物だが、共にインパクトを生むことに変わりはない
2025年10月09日
-
一部の地域は企業関連で改善の兆し~物価高・海外動向・新政権の政策を注視
2025年10月 大和地域AI(地域愛)インデックス
2025年10月08日
-
政治不安が続くアジア新興国、脆弱な中間層に配慮した政策を
2025年10月10日
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日