サマリー
習近平・李克強政権が前政権から引き継いだのは、①投資に過度に依存した経済発展パターンの限界、②膨張する地方政府債務とシャドーバンキング、③深刻化する環境汚染、④「国進民退」(国有企業が優遇され、民間企業が蚊帳の外に置かれる)に象徴される経済改革の停滞、といった負の遺産である。
習近平氏は、党・国家・軍のトップを兼任し、2013年11月の三中全会で設置が決定された「全面的改革深化指導小グループ」と、「国家安全委員会」のトップにも就任するなど、権限を集中させている。改革の意思決定と断行力を高め、抵抗勢力(既得権益層)を封じ込めるためとの解説がなされる一方で、習氏は「漸進主義」に度々言及するなど、改革のスピード感には乏しいのではないかとの見方もある。
残念ながら、この3月の全人代では安定維持が最優先され、諸問題の解決は先送りにされた印象が強い。足元で内需が減速するなかで、引き続き7.5%の成長目標を達成するには、投資に頼らざるを得ないであろうし、デフォルト騒ぎでシャドーバンキングを通じた資金仲介が停滞するのであれば、銀行貸出を増やさざるを得ない。銀行と大型国有企業との密接な関係を考えれば、「国進民退」が一段と進むことになる。
環境問題について、全人代では、①2014年は鉄鋼2,700万トン分、セメント4,200万トン分など、エネルギー消費量と汚染物質排出量が多い旧式生産能力を廃棄し、第12次5ヵ年計画の廃棄目標を1年前倒しで実施する、②大気汚染対策を強化し、2014年は小型石炭ボイラー5万台を廃棄し、石炭火力発電1,500万kw分に脱硫装置を、1.3億kw分に脱硝装置を、1.8億kw分に集塵装置を取り付け(2013年の中国の火力発電設備容量は8.6億kw)、排ガス基準をクリアしていない旧型車を600万台廃棄し、全国でユーロ4に相当する高品質のガソリンを供給する、といった目標を掲げた。①の廃棄は毎年恒例で毎年超過達成をしているが、実情は「一時休止」にすぎない。問題は実際の「廃棄」をどう担保するかであるが、この点について具体的な方策は盛り込まれていない。
三中全会で打ち出された2020年までの改革の諸方針は概ね高い評価を受けた。今後はその実行力が問われる。今はその準備段階であるが故の「まだ」決められない政治であることを祈りたい。
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