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人民元変動幅拡大=元高加速にあらず

今月の視点

2014年02月26日

経済調査部 主席研究員 齋藤 尚登

サマリー

中国人民銀行は2014年2月17日~18日に、2014年のクロスボーダー人民元業務に関する会議を開催し、①人民元のクロスボーダー使用を引き続き拡大させ、関連政策を整備する、②通貨スワップ協定の活用により、相互資金移動のツールを拡充する、③人民元による資本項目取引の推進を加速し、クロスボーダー資本移動の管理方式を確立する、④人民元レートの形成メカニズムを改善し、秩序立って為替レートの変動幅を拡大する、ことなどを重点項目に掲げた。


こうした方針は既に2013年11月の中国共産党第18期中央委員会第三回全体会議(三中全会)で発表されているが、「全面的改革深化」は2020年までに決定的な成果を上げるとされ、具体的なスケジュールへの言及はなかった。今回、2014年の重点項目として人民元レートの変動幅拡大が明示されたことで、現在、当日朝当局が発表する基準レートの±1.0%となっている対米ドルレートの一日の変動幅が、近々拡大される可能性が高まった。ちなみに、対米ドルの変動幅は2005年7月以降の±0.3%から、2007年5月に±0.5%に、2012年4月には±1.0%に拡大されている。


一部には、これにより元高が加速するとの期待が強いが、変動幅拡大との因果関係はない。これは基準レートに対するその日一日の変動幅が拡大されるにすぎず、当日の終値が翌日の基準レートに反映されるわけではないためである。例えば、当日の終値が朝発表された基準レートに対して1%の元高で引けても、翌日の基準レートは元安に設定することも可能であり、基準レートの決定は当局の思惑次第となっている。つまり、変動幅拡大によってもたらされるのは、その日一日のボラティリティの増大である。人民元レートの市場化が大きく進展したとの判断は、その日の終値が翌日の基準レートにきちんと反映されるか、あるいは「基準レート」制度そのものが撤廃されてからとなろう。


中国人民銀行が「市場の需給に基づいて、通貨バスケットを参考に調整する管理フロート制」を導入した2005年7月21日以降で、元高が加速したのは、輸入物価が大きく上昇したときに限られる(特に2007年~2008年)。元高誘導の目的は物価安定であり、足元、そして当面の間、少なくとも元高が加速する状況にはない。

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