サマリー
◆中国証券監督管理委員会(CSRC)は、2013年11月30日付けで「新株発行体制改革をさらに推進することに関する意見」(以下「意見」)を発表した。審査手続きを簡略化し、発行価格や発行方法についてもCSRCは関与せず、市場に委ねられる。一部では新株公開発行手続きが審査制(承認制)から登録制へ変更されたと取られかねない報道があるが、これは中長期目標であり、今回の「意見」でも審査制(承認制)は維持されている。関連規則の修正を待って、上海・深圳市場では2012年9月以降ストップしていた株式新規公開(IPO)が再開される見通しである。
◆今回の「意見」で特筆されるのは、株式新規公開を申請している企業に対して、会社債(※1)を先行発行する申請を行うことを認めたことである。従来、会社債の発行は上場会社に限られていたが、今後は、「申請中」の企業にも門戸が開かれる。上場審査が否決され、上場会社とならなくても、会社債の発行は認められることになる。資金調達手段の拡充という点では、重要な一歩といえる。
◆当局は、株価の長期下落局面では、新規上場をストップし、株式需給の悪化を緩和することで、マーケットのテコ入れを図り、その後、株式市場の改革・健全策の発表を機に再開するということを繰り返してきた。しかし、このような行政手段的な方法はマーケットの資金調達機能を無視したやり方である。今回の「意見」では、「CSRCの新株発行承認文書の有効期間は12ヵ月であり、その期間内に発行人は自主的に発行のタイミングを決定する」としている。当局が株式新規公開を調整する従来の方法が本当に変わるのかにも注目したい。
◆この他、CSRCは「裏口上場審査に株式新規公開発行基準を厳格に適用することに関する通知」を発表し、メインボードでは、裏口上場に株式新規公開発行と同様の条件・基準を厳格に適用するとした一方で、深圳市場の創業板(新興企業ボード)では、裏口上場そのものが禁止されることになった。週明け12月2日の創業板株価指数は前週末比8.3%の急落に見舞われた。
(※1)社債にはCSRCが認可を与える会社債の他に、国家発展改革委員会が認可を与えるプロジェクト債がある。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
-
中国経済:2023年の回顧と2024年の見通し
24年の成長率目標は5%か?達成の鍵は民営企業へのサポート強化
2023年12月21日
-
2024年の米国経済見通し
①個人消費の腰折れ、②インフレ率の高止まり、③政治の停滞がリスク
2023年12月21日
-
2024年度税制改正大綱解説
定額減税は経済対策としては疑問だが、インフレ調整策としては有効
2023年12月25日
-
四半期報告書の廃止に関する改正法の成立
四半期報告書が廃止された後の四半期決算短信の内容は?
2023年12月04日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
中国経済:2023年の回顧と2024年の見通し
24年の成長率目標は5%か?達成の鍵は民営企業へのサポート強化
2023年12月21日
2024年の米国経済見通し
①個人消費の腰折れ、②インフレ率の高止まり、③政治の停滞がリスク
2023年12月21日
2024年度税制改正大綱解説
定額減税は経済対策としては疑問だが、インフレ調整策としては有効
2023年12月25日
四半期報告書の廃止に関する改正法の成立
四半期報告書が廃止された後の四半期決算短信の内容は?
2023年12月04日