サマリー
◆高齢化が進むアジアの中でも、人口規模や急速に進展する高齢化を背景に、中国の年金制度・資産が注目されよう。本稿では中国の年金制度・資産の現状・課題を分析し、今後の可能性について論じる。
◆中国の年金制度は公的年金が中核に据えられている。具体的には、都市部の就業者が加入する城鎮企業職工基本養老保険(都市就業者年金)が代表的な年金制度であるが、近年は都市住民年金や新型農村年金が創設され、これまで年金制度の枠組み外にいた人々も社会保障制度に組み込まれつつある。
◆ただし、中国の年金制度には課題も存在する。例えば、都市就業者年金は地域ごとに年金資産の管理を行っているが、地域によっては年金収支が赤字化しており、政府による補填に依存している。今後は年金資産管理の全国統合といった改革が必要となろう。
◆また、年金財源も不足している。現在も政府は赤字補填等を行っているが、「空口座」問題や、都市住民年金や新型農村年金の給付額引き上げといった財政負担のさらなる増加が懸念されている。政府拠出に依存しない年金制度の整備が急務となろう。
◆中でも、都市就業者年金の自立化は、財政負担を減らすための短期的な課題と言える。年金資産管理の全国統合に加え、現在規制下にある年金資産の運用を徐々に自由化することによって、将来の年金収支の悪化を防ぐための原資を準備することも重要であろう。また、公的年金を補助するために、企業年金の発展・利用拡大を促す制度設計も望まれる。現在、格差是正や資産運用に関する年金制度改革が政府内で議論されている。年金制度の今後の改革動向が注目されよう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
中国経済見通し:泥沼化する不動産不況
低迷する内需。財政出動・さらなる金融緩和への期待が高まる
2026年06月22日
-
中国:物価高をピッグサイクルが救う?
農作物安全保障、通貨価値安定に不可欠なピッグサイクルの平滑化
2026年06月10日
-
中国経済見通し:2026年4月は急減速
固定資産投資は再び前年割れ、小売売上は微増にとどまる
2026年05月26日
最新のレポート・コラム
-
2025年度の個人向け社債市場の動向
発行額は過去最高に。今後は発行体の裾野が広がるかが注目点
2026年07月10日
-
外為法審査による買収案件中止とその示唆
外為法に基づく投資審査制度と判断のポイント
2026年07月10日
-
26年度最低賃金改定のポイント①
高市政権はより緩慢な引上げを容認/改定内容への説明責任が焦点
2026年07月09日
-
米国:AI関連投資の持続性を左右する3つの要因
①ハイパースケーラーの収益化志向、②「循環資金」が内包するリスク、③レバレッジ型ETFによる変動拡大
2026年07月09日
-
実務手引き「社債発行のガイドブック」— 社債発行への入り口
2026年07月10日
よく読まれているリサーチレポート
-
中国経済見通し:泥沼化する不動産不況
低迷する内需。財政出動・さらなる金融緩和への期待が高まる
2026年06月22日
-
ナフサ問題がもたらす日本経済の不安要素
物価上昇は避けられず、供給不足が生じればさらなる経済下押しも
2026年06月15日
-
第229回日本経済予測(改訂版)
混迷する中東情勢、その先で問われる日本経済の構造転換①「持続的成長」の条件、②資産形成と成長の好循環、を検証
2026年06月08日
-
「成長投資ガイダンス」の解釈とその活用法
資本コストを上回る資本収益性の確保は価値創造(EP)の前提条件
2026年06月17日
-
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
中国経済見通し:泥沼化する不動産不況
低迷する内需。財政出動・さらなる金融緩和への期待が高まる
2026年06月22日
ナフサ問題がもたらす日本経済の不安要素
物価上昇は避けられず、供給不足が生じればさらなる経済下押しも
2026年06月15日
第229回日本経済予測(改訂版)
混迷する中東情勢、その先で問われる日本経済の構造転換①「持続的成長」の条件、②資産形成と成長の好循環、を検証
2026年06月08日
「成長投資ガイダンス」の解釈とその活用法
資本コストを上回る資本収益性の確保は価値創造(EP)の前提条件
2026年06月17日
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日

