サマリー
◆6月20日にかけて上海銀行間取引金利(SHIBOR)が急騰した。金融当局は、銀行システム以外で調達された資金が、貸出リスクの高い中小企業や期待収益率の低いプロジェクト、不動産に向かっていることに懸念を持っていた。中国人民銀行がオペレーションによって資金を供給し、金利低下を促すことは可能であり、それを敢えてしなかったのは、金融秩序の乱れに対する金融当局の不快感を表明し、金融秩序の回復を促すためであったと考えられる。
◆結局、SHIBOR翌日物は6月5日の4.62%から6月20日には13.44%へ急騰し、6月24日の上海総合株価指数は前日比5.3%の急落を演じた。金融秩序の回復に向けた荒療治が、金融・資本市場の混乱を招いたのである。
◆金融秩序の乱れに対する中国人民銀行の不快感は十分にマーケットに認識され、アナウンスメント効果としては、所期の目標は達成できたといえよう。SHIBORも6月20日をピークに低下傾向にある。しかし、金融秩序の回復には、まだ時間が必要である。
◆地方政府融資平台やシャドーバンキングについては、負債残高を増やさないことが肝要である。おそらく、政府(省レベル)との関係が密接な貸出先に対しては、ロールオーバー(借り換え)によって、返済期限の長期化と分散化が図られよう。抜本的な処理が行われなければ、単なる先延ばしにすぎないが、それでも中国の経済規模の拡大によって、インパクトの逓減は期待できるようになる。一方で、市町村など下位の地方政府との関係が深く、かつ期待収益率が低い貸出先については、貸し倒れリスクは増大するので注意が必要であろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
中国:新5カ年計画の鍵は強国と自立自強
基本方針は現5カ年計画を踏襲、構造問題の改革意欲は低下?
2025年10月24日
-
中国経済見通し:米中摩擦と厳しさ増す内需
固定資産投資は前年割れ。米中貿易戦争は再び激化?
2025年10月21日
-
15・5計画、構造問題への処方箋を出せるか?
5年間の平均成長率目標は設定「できない」可能性大
2025年10月21日
最新のレポート・コラム
-
2025年9月全国消費者物価
政策要因でコアCPI上昇率拡大も物価の上昇基調には弱さが見られる
2025年10月24日
-
中国:新5カ年計画の鍵は強国と自立自強
基本方針は現5カ年計画を踏襲、構造問題の改革意欲は低下?
2025年10月24日
-
公共施設マネジメントと公会計
〜機能する行政評価〜『大和総研調査季報』2025年秋季号(Vol.60)掲載
2025年10月24日
-
トランプ2.0で加速する人手不足を克服できるか
~投資増による生産性向上への期待と課題~『大和総研調査季報』2025年秋季号(Vol.60)掲載
2025年10月24日
-
純債務って何?高市総理が目指す財政指標の意味
2025年10月24日
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日

