サマリー
二段階目はヒト・モノ・カネの日本外しであり、これは少なくとも数ヵ月は続くと懸念される。日本製品の不買運動、各種プロジェクト入札からの日本外しなどである。日中国交40周年の記念式典は事実上中止に追い込まれてしまった。9月末から10月初旬は、中秋節・国慶節の書き入れ時であり、日本企業は、厳しい商戦を余儀なくされよう。
2012年6月末時点の日本の対中国直接投資は、累計で840億米ドルに達する。最近では、欧米の対中直接投資が減少するなか、2012年1月~8月の日本からの直接投資は前年同期比16.2%の増加を記録している。これまでも日中関係は幾度となく悪化したが、現地日系企業は、同様の試練を地道な努力の積み重ねによって、克服してきた。今回もそれができると願っている。
しかし、これから中国への進出を計画する、あるいは投資拡張を計画する日本企業は、チャイナリスクをきちんと認識するべきである。日中関係の緊張やそれによる企業活動への悪影響は、これからも繰り返される可能性が高い。
もう一つのチャイナリスクが、成長性の鈍化である。まず、投資に過度に依存した成長は限界に近づきつつある。GDPに占める総資本形成のウエイトは2008年以降過去最高を更新し続ける一方、総資本形成の実質GDP成長率寄与度は2009年をピークに低下している(詳しくは大和総研レポート「中国経済への過度の期待は禁物」(2012年9月20日付)を参照)。このほか、2020年頃からは少子高齢化問題が構造的な成長下押し要因となる。2ケタ成長を前提にしてよい時代は既に終わりを告げたのである。対中投資のキーワードは、保守的な前提条件でも利益を計上することができるような綿密な事業計画と、投資回収期間の最短化の2つとなろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
中国:年後半減速も2025年は5%前後を達成へ
不動産不況、需要先食い、トランプ関税2.0の行方
2025年07月22日
-
中国:内巻(破滅的競争)と上乗せ関税の行方
追加関税大幅引き下げでも製造業PMIは50割れが続く
2025年06月24日
-
中国:関税引き下げを受け、見通しを上方修正
25年は3.9%→4.8%、26年は4.0%→4.2%に上方修正
2025年05月23日
最新のレポート・コラム
-
カーボンクレジット市場の新たな規律と不確実性
VCMI登場後の市場と、企業に求められる戦略の頑健性
2025年07月24日
-
金利上昇下における預金基盤の重要性の高まり
~預金を制するものは金融業界を制す~『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
-
企業の賃金設定行動の整理と先行きへの示唆
~生産性に応じた賃金決定の傾向が強まる可能性~『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
-
ドイツ経済低迷の背景と、低迷脱却に向けた政策転換
『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
-
「外国人優遇」は本当か?データで見る国民健康保険・国民年金の実態
2025年07月25日
よく読まれているリサーチレポート
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
-
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日