チャイナリスク

今月の視点

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2012年09月26日

サマリー

日中関係悪化の影響は二段階に分けられる。一段階目は、デモが誘発した暴動、焼き打ち、略奪などの破壊行為であり、当局は9月18日(81年前に満州事変のきっかけとなった事件が発生した日)をピークに急速に収束させようとしている。10月にも開催される中国共産党第18回党大会を控え、何よりも政治的・社会的安定が重視されるなか、デモが主張する「反日」が、「反政権」に変わるリスクを摘み取ろうとの判断であろう。

二段階目はヒト・モノ・カネの日本外しであり、これは少なくとも数ヵ月は続くと懸念される。日本製品の不買運動、各種プロジェクト入札からの日本外しなどである。日中国交40周年の記念式典は事実上中止に追い込まれてしまった。9月末から10月初旬は、中秋節・国慶節の書き入れ時であり、日本企業は、厳しい商戦を余儀なくされよう。

2012年6月末時点の日本の対中国直接投資は、累計で840億米ドルに達する。最近では、欧米の対中直接投資が減少するなか、2012年1月~8月の日本からの直接投資は前年同期比16.2%の増加を記録している。これまでも日中関係は幾度となく悪化したが、現地日系企業は、同様の試練を地道な努力の積み重ねによって、克服してきた。今回もそれができると願っている。

しかし、これから中国への進出を計画する、あるいは投資拡張を計画する日本企業は、チャイナリスクをきちんと認識するべきである。日中関係の緊張やそれによる企業活動への悪影響は、これからも繰り返される可能性が高い。

もう一つのチャイナリスクが、成長性の鈍化である。まず、投資に過度に依存した成長は限界に近づきつつある。GDPに占める総資本形成のウエイトは2008年以降過去最高を更新し続ける一方、総資本形成の実質GDP成長率寄与度は2009年をピークに低下している(詳しくは大和総研レポート「中国経済への過度の期待は禁物」(2012年9月20日付)を参照)。このほか、2020年頃からは少子高齢化問題が構造的な成長下押し要因となる。2ケタ成長を前提にしてよい時代は既に終わりを告げたのである。対中投資のキーワードは、保守的な前提条件でも利益を計上することができるような綿密な事業計画と、投資回収期間の最短化の2つとなろう。

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