サマリー
2011年の上海総合株価指数は年間21.7%下落。2012年7月23日時点でも昨年末比2.6%安と冴えない展開が続いている。
中国の株式市場の現状を風刺する「韭菜姑娘」(韮娘)という歌が、2011年4月20日に中国のインターネットで発表されるや、瞬く間に流行した。韮には「何度も収穫が可能であるが、収穫量はだんだん減少する」とのイメージがあり、「株式投資で損切りを繰り返すうちに投資元本が減っていく」ことを揶揄している。韮娘の嘆きは、投資家が市場の噂に惑わされていることや、2011年にIPO価格が高くなりすぎ、上場初日に株価が発行価格を割り込む銘柄が増えたことなどに続いていく。
昨年の株価低迷は、行きすぎた金融引き締めと欧州危機による景気・企業業績悪化が主因とされるが、2012年以降、金融は緩和に転じている。やはり、根本的な要因は、株式市場が一般投資家の信頼を回復できていないことなのだろう。
2011年10月に、朱鎔基・前首相を支えた「四天王」の一人で、強い改革志向を持つとされる郭樹清氏が中国証券監督管理委員会(CSRC)主席に就任した。2012年に入ると、CSRCは、IPO順番待ち企業リストの公表、株式発行制度改革、QFIIの認可額上限の引き上げ(300億米ドル⇒800億米ドル)と資格認定の緩和、上場廃止基準の強化など、矢継ぎ早の制度改革を実施している。このうち、株式発行制度改革は、IPO価格の吊り上げ回避を目的とし、発行価格PERが同業の平均PERを25%以上上回らないことを推奨している。上場廃止基準の強化では、3年連続の赤字決算で上場暫定廃止になった企業の上場再開の条件に、非経常利益を除く前と後で、いずれの純利益も黒字になることを求め、親会社やグループ会社からの優良資産の注入による、起死回生策を防ぐ規定が設けられた。これは資産注入をしても、マネージメントが変わらなければ、抜本的な業績改善策とはならないとの判断であろう。
しかし、現地取材では、株式市場の信頼回復には、それだけでは不十分で、(1)情報開示の透明性向上など情報の非対称性に起因する市場の歪み是正が不可欠である、(2)CSRCによる発行市場と流通市場の一元管理を改め、発行市場は証券取引所に権限を委譲し、CSRCは流通市場の監督管理に専念すべき、との指摘があった。郭樹清氏率いるCSRCの次の一手に注目したい。
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